共通テスト改革で何が変わったのか
医学部入試は、他学部と比べても制度変更の影響を受けやすく、しかも求められる学力水準が非常に高い入試です。特に2026年度入試は、2025年度から始まった共通テスト新課程への移行後2年目にあたり、その影響が具体的な数字にも表れた年でした。ここでは、共通テスト改革のポイントと、それによって見えてきた医学部入試の特徴を整理します。
医学部入試では、2025年度入試から共通テストが新課程に移行し、制度が大きく変わりました。最も大きいのは、従来の5教科7科目・900点満点から、6教科8科目・1000点満点へと拡大したことです。新たに加わったのが「情報Ⅰ」で、これにより単純に科目数が増えただけでなく、受験生の学習負担も一段と重くなりました。
そのほかにも、数学ⅡBが数学ⅡBCとなって大問が2問増え、試験時間も10分延長。国語も現代文重視の配点となり、大問が1つ増えて10分延長されています。さらに地歴公民の科目構成も再編され、従来以上に制度を正確に理解したうえで受験校を考える必要が出てきました。
医学部では、こうした制度変更が単なる形式面の話にとどまりません。大学によっては「情報Ⅰ」の配点比率が大きく異なり、地歴公民の選択科目によっては受験できない大学もあります。共通テストの仕組みの変化が、そのまま出願戦略や志望校選定に関わってくるのが医学部入試の特徴です。
2026年度は平均点が低下、高得点層も減少
2026年度の共通テストでは、平均得点率が約60%となり、前年から約3%低下しました。さらに、医学部医学科受験の目安となる80%以上の高得点層は、前年比で約37%減少しています。これを受け、各大学のボーダーラインも全体的に数%下がる傾向が見られました。
ただし、ここで重要なのは、平均点が下がったからといって医学部合格に必要な学力そのものが大きく下がったわけではないという点です。共通テストは制度変更があった年に平均点が一時的に上がり、その翌年に下がり、その後落ち着いていく傾向があります。2026年度入試も、その流れの中で起きた変化と考えるのが自然でしょう。
実際、医学部受験では依然として高得点が前提です。国公立医学部医学科を目指すなら、共通テストでは少なくとも8割前後を視野に入れる必要があります。平均点が下がったから安心できるわけではなく、むしろ上位層同士の争いであることに変わりはありません。
新課程共通テスト対策に必要なこと
新課程の共通テスト対策で大切なのは、特別な裏技ではなく、基礎を中心とした地道な積み重ねです。6教科8科目という科目数の多さを考えると、得意科目を伸ばすだけでなく、苦手科目も含めてバランスよく仕上げる必要があります。
その土台になるのは、教科書や学校配布の問題集レベルの内容を確実に理解することです。短期間の詰め込みや丸暗記では知識が定着しにくく、入試本番では通用しません。毎日一定の学習時間を確保し、理解して、演習し、反復して定着させる。この基本を外さないことが最も重要です。
さらに、新課程の共通テストでは会話文、資料、図表を読み取りながら解答する問題が増えており、形式への慣れも欠かせません。受験学年では過去問や予想問題を活用し、時間を測って演習を重ねることが不可欠です。また、志望校のボーダーをもとに、全体の得点率だけでなく科目ごとの目標を設定することも有効です。例えばボーダーが85%なら、全科目を一律85%でそろえるのではなく、得意科目で上乗せし、苦手科目で最低限を確保する形で合計点を設計するほうが現実的です。
医学部入試と他学部との違い
医学部医学科は、他学部と比べても依然として人気が高く、それ自体が入試の厳しさにつながっています。少子化の影響で国立大学一般前期日程全体の平均倍率は2.93倍まで下がっていますが、医学部医学科50大学の平均倍率は4.31倍と高水準を維持しています。
私立大学になると、日程が重ならない限り複数校を併願できるため、志願者数はさらに膨らみます。募集人員86名に対して8000人以上が志願し、志願者倍率が約100倍に達するケースもあります。ただし、これはあくまで「志願者倍率」であり、繰り上げ合格を含めた合格者数で割る「実質倍率」はその3分の1程度に落ち着くのが一般的です。
医学部人気の背景には、女子志望者の増加や、コロナ禍以降の医療への関心の高まりがあります。現在は男女比もおおむね正常化しており、かつて問題になった性別による不公正は是正されたと考えてよいでしょう。
一方で、医学部は浪人生が多いことも大きな特徴です。国公立では現役と浪人がおおむね半々、私立では現役3割・浪人7割程度とされます。私立医学部は学費負担が大きいため、現役時は国公立中心、浪人してから私立も視野に入れる受験生が多いことが背景にあります。裏を返せば、現役で医学部に合格するには、それだけ早い段階からの準備が重要だということです。
科目負担、学費、入試方式も医学部特有
医学部医学科は、同じ医療系の歯学部や薬学部、獣医学部などと比べても、入試科目の負担が最も重い学部です。数学はⅠA・ⅡB・ⅢCまで、理科は2科目必要という大学が多く、国公立では共通テストに加えて個別試験でも3教科4科目が課されます。私立も一般選抜では同様に英数理2科目が基本です。
また、学費の差も大きな特徴です。国公立医学部の6年間総学費はおよそ350万円ですが、私立では最も低額の大学でも1,850万円、高額な大学では4,740万円に達します。ただし、私立には地域枠などを中心に修学資金貸与制度があり、条件を満たして一定期間勤務すれば返還免除となる場合もあります。将来どのような医師になりたいのかというキャリア観まで含めて、制度を理解したうえで利用することが大切です。
2026年度入試のスケジュール変更にも注意
2026年度入試では、私立医学部の一般選抜日程にも変化が見られました。これまで1月中に入試を実施していた大学の一部が、2月以降へ試験日を移しています。背景には、文部科学省が私立大学に対し、一般選抜を2月1日以降に実施するよう改めて求めたことがあります。
今後はさらに多くの大学が2月以降に試験日を移す可能性があり、これまで以上に日程の重複が増えることも予想されます。1校しか試験を行わない日には志願者が集中しやすく、複数大学が重なる日には分散が起こるため、日程の読み方が合否に影響する場面も増えそうです。
医学部入試に必要な学力の目安
では、実際にどの程度の学力が必要なのか。国公立医学部一般前期日程では、最難関校で共通テスト9割前後、個別試験では偏差値70以上が求められます。一方で、全体として見た場合の下限の目安は、今年でいえば共通テスト78%、個別試験では全統記述模試で偏差値62.5程度です。
私立大学でも事情は大きく変わらず、一般選抜で選択肢を広げるには偏差値62.5〜65程度、共通テスト利用でも8割以上の得点力が欲しいところです。平均点の上下でボーダーは多少動きますが、個別試験で求められる学力水準そのものは大きく変わりません。結局のところ、共通テストでも個別試験でも高い総合力が必要なのが医学部入試だといえるでしょう。
まとめ
2026年度の医学部入試は、新課程共通テスト移行後2年目として、制度変更の影響が数字にも表れた年でした。平均点は下がり、高得点層も減少しましたが、医学部合格に必要な学力水準自体が大きく変わったわけではありません。
むしろ、科目数の多さ、科目指定の複雑さ、浪人生の多さ、学費負担、推薦・地域枠・共通テスト利用など多様な入試方式を含め、医学部入試はますます「情報戦」と「総合力勝負」の色合いを強めています。制度変更に振り回されるのではなく、基礎を着実に積み上げ、自分に合った受験戦略を早い段階で組み立てることが、合格への近道になるはずです。
尾木 歩
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務副統括

