医学部入試の難しさとは?
医学部入試は難しいと言われますが、難しさには、倍率の高さ、偏差値の高さ、問題そのものの難しさなど、いろいろな要素があります。
倍率から見ていきますと、2024年度の国公立大医学部の平均倍率は前期日程が4.5倍、後期日程が20.1倍でした。全学部で見た平均倍率が前期2.9倍、後期9.7倍だったのと比べるとかなり高くなっています。また、国公立大医学部はすべての大学が2段階選抜を設定しているため、受験生は共通テストで各大学が設定している基準を見据えて出願します。
そのため、自ずから共通テストの得点が高い人が集まることになるのです。よって先程の平均倍率は、共通テストの成績が高い集団の中での4.5倍や20.1倍ですから、かなりハイレベルの戦いが繰り広げられているわけです。私立大は補欠からの繰り上げ合格者数を公表しない大学もあって、正確な平均倍率は算出できませんが、実質倍率が10倍を超えるような狭き門の大学がほとんどです。
次に偏差値ですが、模試のデータで見ると、河合塾の全統模試の場合、国公立大でも私立大でもボーダーライン偏差値が60以上になっています。ですから、他学部に比べてかなり学力の高い人が受験しているわけですが、偏差値が高ければ必ず合格するというものでもありません。
全統模試の場合、総合評価がA判定だと合格可能性80%以上、B判定だと65%、C判定だと50%です。数字だけ見ると、A判定ならかなりの確率で合格できる計算です。しかし、各偏差値帯ごとに実際の合格状況を全国の医学部受験生について調査したデータブック「2024年度入試結果調査データ」によると、A判定でも合格できなかった人が多いというのが医学部入試での現状です(下表参照)。偏差値が同じでも「合格できる」、「合格できない」という差が出るのは、模試の問題と実際の大学の入試問題が大きく異なるのが1 つの要因です。

ここで、大分大学と富山大学の英語の出題傾向を見てみましょう。
大分大学の2024年度入試では、英語は長文3題からなる出題で、長文は医学関連の単語が多く、難度が高くなっています(下表参照)。また、大分大学の特徴的な出題形式として、大問3では語句整序で文を完成させ、それを長文中の空所に挿入する問題が出題されています。

一方、富山大学の英語は長文読解2題ですが、本格的な医学・医療系や科学系のテーマが扱われ、文の内容も設問も難度が高くなっています。自由英作文も他大学のものと比べ語数が多く、医療系の小論文を英語で書くような出題で、一般的な模試の英語とは出題が大きく異なっています。

医学部は入試問題も難しい?
続いて、医学部の入試問題は難しいかということですが、すべての大学が難しいとは限りません。大学の偏差値の高さと問題自体の難度は一致するとは限らないのです。国公立大の場合、2次試験は記述式ですから、難しいイメージを抱く受験生が少なくありません。しかし、合格最低点が相当高い大学もあり、とりわけ総合大学では、他の理系学部と同じ入試問題であったり、英語は文系も含めた全学部共通というケースもあります。その場合は総じて典型的な問題が多く、難問はあまり出題されません。
逆に、非常に難しい入試問題を出題する大学もあります。東京科学大学、京都府立医科大学、滋賀医科大学、和歌山県立医科大学など、単科医科大学は難しい入試問題が多いようです。
また、総合大学でも医学部だけ別の問題を出す大学は、特殊な出題になっていたり、問題の難度が高かったりしているのでしっかり確認しておいたほうが良いでしょう。例えば、弘前大学、富山大学、福井大学、山梨大学(後期)、名古屋市立大学、愛媛大学、高知大学、佐賀大学、宮崎大学などは、医学部の独自問題を課す入試科目もあります。また、合格最低点がかなり低い大学がありますが、そのような大学は当然ながら入試問題が相当難しいか、問題量がかなり多くなっています。
私立大の医学部の英語では、医療や医学に関する問題がよく出ます。例えば、近畿大学では英語の試験に医療や自然科学系の長文が毎年のように出題されます。2024年度の一般前期では説問で「ベートーヴェンの病に関するDNA分析」についての長文問題が出題されました。この長文の文章の一部と日本語訳を次ページに載せています。
このように、医学部ならではの内容やテーマが扱われているのです。また、医療系の英語長文(課題文)の内容を正確に把握したうえで、そのテーマに対する自分の考えを表現する力を問うような自由英作文を課す大学もあります。ですから、医療や医学に関する英文を多読して背景知識を積み、このような英文に慣れておく必要があります。私立大では特徴的な出題が多い分、その特徴をつかんだ対応力を磨いておかないと差がつきやすいため、出題傾向に合わせた対策が重要です。
また、医学部で特徴的なのは、面接試験があることです。面接では、医師や研究者としての適性をチェックするという狙いがあります。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括