かつて、マイホームは人生における一大目標であり、「一度手に入れたら生涯住み続けるもの」という考え方が一般的でした。しかし、家族構成の変化、通勤事情、経済状況……私たちの暮らしを取り巻く環境は常に変化し、住まいに求めるニーズも多様化しています。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、「住み替え」を考えるときのポイントについてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
世帯年収1,200万円・30代共働き夫婦、〈千葉の果て駅〉に1軒目マイホームよりスペックダウンの2軒目を購入。住み替えも…「幸せです」と笑顔の理由 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

理想から現実へ…「2軒目」を意識した瞬間 

ある晩、夕食後のリビングで夫婦は話し合いました。 

 

「これから10年、20年って考えたとき、この家にずっと住んでいたいと思う?」 

「……正直、もうちょっと駅に近くて、保育園も通いやすい場所のほうがいいなって思ってる」 

 

最初はもったいない気持ちもありました。まだローンも2年しか払っていない。引っ越しにはお金もかかる。――そこで、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することにしました。 

2軒目は千葉の果てだが… 

「いまの家も地価が上がってきているから、思ったより高く売れるかもしれない」 

「無理のないローンで、生活の質が上がる選択肢なら、“住み替え”は理にかなっているかも」 

 

相談を経たA夫婦は、妻の勤務先まで近く、始発駅のため夫は朝のラッシュ時座って1本で都内の勤務先まで行くことができる利便性の高いエリアの戸建てへ住み替えを決意します。1軒目と比べると購入金額は上昇、間取りもややコンパクト。しかし……。

 

「子どもを抱えながら坂道を上らなくていいのが、想像以上にラク」 

「保育園もすぐ近く。帰り道に買い物も済ませられて、本当に助かる」 

「夫婦の会話が増えた気がするよね。気持ちに余裕ができたというか……」 

 

新居は、設備や広さだけで見れば「スペックダウン」だったかもしれません。しかしA夫婦にとっては、日々のストレスが減り、家族の時間を心から楽しめるようになったという意味で「生活の質」が向上したのでした。 

 

「いまのほうが幸せだね」 

 

そう微笑む2人の姿に、家は生活の基盤であり、暮らしの器であることを改めて感じさせられます。