かつて、マイホームは人生における一大目標であり、「一度手に入れたら生涯住み続けるもの」という考え方が一般的でした。しかし、家族構成の変化、通勤事情、経済状況……私たちの暮らしを取り巻く環境は常に変化し、住まいに求めるニーズも多様化しています。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、「住み替え」を考えるときのポイントについてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
世帯年収1,200万円・30代共働き夫婦、〈千葉の果て駅〉に1軒目マイホームよりスペックダウンの2軒目を購入。住み替えも…「幸せです」と笑顔の理由 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

住み替えを考えるときの「お金と暮らしのチェックポイント」 

住み替えは人生のなかでも大きな決断の一つです。失敗しないためには、物件の条件だけでなく、家計や将来設計も含めた「総合的な視点」が求められます。以下のポイントを押さえることが大切です。 

 

住宅ローン残債と資産価値のバランス 

・現在の住宅ローンの残りの返済額と、自宅の査定価格(売却可能価格)を必ず確認しましょう。 

・売却価格がローン残債を上回っていればプラスとなりますが、下回っていると自己資金での補填が必要になるケースがあります。 

・「新築から間もない住宅」は値下がりリスクが高く、売却損が出るケースもあるため要注意です。 

・不動産会社による複数査定とFPによるシミュレーションを組み合わせて、正確な現状把握を行いましょう。 

 

国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によると、2回以上住宅を取得している人の割合は住宅購入者の18.8%。特に三大都市圏では22.6%に達し、2回以上購入する人の比率は過去数年と比較し増加傾向です。 

 

「一度買った家に一生住み続けるのが当たり前」 そう思っていた時代からは、変わりつつあるのかもしれません。 

 

大切なのは、周囲の評価やスペックにとらわれず、「自分たちにとって本当に必要なものはなにか?」を考えることです。 家の広さよりも通勤時間、最新設備よりも家族の会話時間……そんな風にそれぞれの価値観を見直した結果としての“住み替え”は、暮らしの満足度を高めてくれることもあります。 

 

2軒目は、ただの買い物ではなく、「暮らし方そのものをアップデートする」という選択になるでしょう。その一歩が、あなたやご家族にとって、より豊かで心地よい日常へとつながるかもしれません。 

 

〈参考〉

国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001767858.pdf

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表