同じ医学部でも出題傾向は大学によって大きく異なる
自分が行きたい大学にこだわることが最も大切であることは間違いありません。しかし、その一方で、自分にとって合格しやすい大学という点も視野に入れて、戦略的に準備を進めていく必要があります。問題自体の難度、試験時間に対する問題量、頻出分野、出題形式、配点など、大学ごとの特徴を踏まえ、自分の学力特性との相性を考えて受験大学を決めることになります。
一般的には模試の偏差値を基準に決めがちですが、医学部の場合はハイレベルな戦いになり、また模試の問題と大学ごとの入試問題は異なるため、模試の偏差値と実際の合否が一致しない場合が多く、偏差値だけでは選べません。したがって、入試問題の難度や出題傾向など、いろいろな条件を調べる必要があります。
下記に2024年度の国公立大医学部2次試験の合格最低得点率の目安を挙げました。それぞれのグラフで大学名が上のほうにあるのは、大学の偏差値レベルに対して比較的入試問題の易しい大学グループ、大学名が下のほうにあるのは比較的入試問題が難しい大学グループです。
横軸の目盛りは全統共通テスト模試に基づいて、河合塾が設定した2025年度の共通テスト目標得点率です。



このように、大学によって問題自体の難度や問題量はもちろん、頻出分野や出題形式なども異なるので、偏差値だけを見て「入りやすそうだ」と受験大学を選ぶと、思うように得点できずに、大失敗してしまうことがよくあります。ですから、過去問や合格最低点を見て自分が対応できる大学、自分の長所を生かせて短所はあまり弱点にならない大学をどう見つけるかが重要になります。
また、同じ大学でも科目ごとに難度や分量にバラツキがあります。下に一部の私立大医学部について科目ごとの難度と問題量を比較した表を挙げましたが、2024年度の大阪医科薬科大学や福岡大学では英語に比べ数学が難しくなっています。このため、英語に比べ数学のほうが得意な受験生がやや有利になります。
これに対して、2024年度の国際医療福祉大学、昭和大学、東邦大学などでは英語に比べ数学の難度が低くなっています。東邦大学の数学は小問10題で問題が易しく、分量も適量なので、数学が苦手な人でも不利になりにくいのです。このように自分の学力特性と各大学の出題傾向を照らし合わせて考え、合格の可能性が高くなる大学を選ぶと良いでしょう。

さらに、自分の分野ごとの得意・不得意と大学ごとの頻出分野を比較することで、より相性の良い出題の大学を考えることもできます。
下に一部の大学について出題傾向と出題分野を比較した表を載せました。大阪医科薬科大学は数学A、数学B、数学Ⅲ、数学Cが中心でやや難度が高い出題なのに対して、藤田医科大学はいろいろな分野から標準レベルの問題が出題されていることがわかります。得意な分野が頻出し、苦手な分野があまり出題されない大学を選ぶことができれば、より合格の可能性が高まります。
