マイホームに庭が欲しいと思っても、敷地条件や費用面であきらめてしまう人もいるでしょう。実は、建物の構造を工夫することで、庭のある暮らしを実現できるかもしれません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、「コの字形の家」という特殊な構造を選択したことで、庭を手に入れた事例を紹介。初期費用がかさんでも「コの字型の家」にしてよかった理由を、設計のポイントとともに探ります。
マイホームの庭はあきらめるしか…一転、特殊な構造で初期費用がかさんでも「コの字型の家」にしてよかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

抜けのある空間演出…第二のリビングになるウッドデッキによる中庭

屋外の眺望は空間の演出により解放感が生まれます。事例の家では、3方向からウッドデッキに出入りできるようにしたことで、窓を通じての広さの演出ができています。夏の暑い時期に直射日光が入ってくる心配がないため、大きな窓を設置できるのも利点でしょう。もし、南側が開けた敷地であれば、ひさしを大きくしたり、シェードを設置したりすることが必要です。軒下にウッドデッキを設ける方法もあります。これは冬場の日射量との兼ね合いもあります。 

 

窓について補足しますと、小窓は断熱性を損なわずに光と風を取り込むのに適しています。その際にすべり出し窓(横方向を回転軸にして、室内外へすべり出しながら開く)がおすすめです。室内に雨が吹き込むのを防止できるからです。また、小窓で生まれるちょっとした抜けも大きな空間演出になります。 

 

事例の家は中庭をウッドデッキにしました。中庭でなくてもウッドデッキは有効なスペースです。第二のリビングともいえます。気をつけたいのが、耐久性です。天然素材は風情がありますが、風雨が直接当たると劣化します。そこで、ウッドデッキには樹脂製の建材がおすすめです。天然素材の風合いを持ちながら耐久性に優れています。

 

また、ウッドデッキに直射日光が当たる場合、夏場は活用しにくいですね。ひさしを大きくしたり、シェードを設置したりし、年中活用できる環境にしてこそ、その空間がいかされるものです。そういった意味でも計画段階で日照シミュレーションを活用しておくべきですね。 

 

敷地条件から庭をあきらめようとするのは早計です。2階のバルコニーを庭として活用することもできれば、事例の家のようにコの字形にして中庭を設置する方法もあります。室内からの眺望は生活のしやすさに大きく関係してきます。

 

ウッドデッキの建材の注意点

天然木:スギやヒノキ、マツなど軽い素材の木材は耐久性に劣る。アイアンウッドと呼ばれる木材は比重があり耐久性に優れている。アイアンウッドであれば設置時は塗装せず、ある程度期間が経ってから塗装するという考え方もある。

人工木:木材に比べて耐久性に優れており、色いろ褪あせもしにくい。直射日光が当たると温度上昇しやすいので、ひさしを大きくするなど、日射遮断の対策が求められる。