マイホームに庭が欲しいと思っても、敷地条件や費用面であきらめてしまう人もいるでしょう。実は、建物の構造を工夫することで、庭のある暮らしを実現できるかもしれません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、「コの字形の家」という特殊な構造を選択したことで、庭を手に入れた事例を紹介。初期費用がかさんでも「コの字型の家」にしてよかった理由を、設計のポイントとともに探ります。
マイホームの庭はあきらめるしか…一転、特殊な構造で初期費用がかさんでも「コの字型の家」にしてよかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

自然エネルギーの有効活用、快適な空間を生み出すとともに光熱費を削減

断熱性は外皮平均熱貫流率(UA値)と、冷房期の平均日射熱取得率(建物への日射熱の入りやすさ)を組み合わせて決まります。後者は日射が熱に変わり内部発熱によって室内が暖かくなるというものです。

 

自然エネルギーを有効活用した設計手法を「パッシブデザイン」といいます。断熱、日射遮蔽(しゃへい)、自然風利用、昼光利用、日射熱利用暖房の5つの要素を満たした設計になります。高性能に加え、パッシブデザインを採用した家は、光熱費を大幅に削減でき、まさに長期優良住宅といえます

 

ただ、敷地条件によって必ずしもパッシブデザインを実現できるわけではありません。その場合、別の方法で断熱性を高めるという対策を施します。 仮に日射熱利用による断熱性が不十分だったとしても、「昼光利用」は工夫次第で取り入れられます。

 

事例の家はコの字形の構造にすることで、昼光を確保しました。光は直射日光だけではありません。屋外の照度を室内に取り込められればよいわけです。これは「昼光率」であらわすことができます。直射日光を除く屋外の照度(全天空照度)に対する室内の測定点の照度の比によって、採光の可能性を示す指標です。値が高いほど評価が高くなります。昼光利用の1つに天窓の設置がありますが、断熱性や耐久性、また日射遮蔽という観点から慎重に検討するべきでしょう。 

 

事例の家ではコの字形のくぼんだ部分の外壁を白くすることで、光を反射しやすくしています。費用をかけなくても工夫すれば光の恩恵を受けられるわけです。 さらに「自然風利用」も取り入れられます。WB工法は家に空気を入れて排出するまでを自然に行えるシステムです。事例の家のようにコの字形にすることで日差しと風の両方を取り込め、快適な空間を生み出すことができるのです。

 

家の内外で豊かさを追求することで、初期費用の回収率がぐんと高まります。 敷地条件で課題があったとしても、構造と設計次第で課題をクリアし、新たなメリットをもたらせることを覚えておきましょう。