住宅は住みはじめてから性能や設備をアップデートさせることが難しいです。予算との兼ね合いから初期費用を抑えることばかりに目が行きがちですが、耐久性が悪く、あとになってメンテナンス費や大きな修繕費が発生してしまっては元も子もありません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、太陽光発電と高性能住宅と組み合わせることで、光熱費を抑えつつ快適な暮らしを実現する「大屋根の家」の事例とともに、将来を見据えた住まいづくりのポイントを解説します。
初期費用250万円上乗せで、40年で売電収入1000万円・電気代400万円削減が可能だが…「太陽光発電」を設置してはいけない家 (※写真はイメージです/PIXTA)

1.大屋根の外装デザイン

[図表2]大屋根の外装デザイン

 

片流れの形状で安定感のあるフォルムに。外壁と屋根に使用しているガルバリウム鋼板と、エントランス部分の外壁の木材が融合したデザインとなっている。

2.解放感ある吹き抜けと回遊性の高い間取り

[図表3]解放感ある吹き抜けと回遊性の高い間取り

 

吹き抜けによる高さを生みだしたことのほか、廊下をつけずに回遊性の高い間取りにしているため解放感がある。全室を空気が移動できるため、空調はエアコン1台で対応。

3.天然素材と金属系素材の融合

[図表4]天然素材と金属系素材の融合

 

天然素材は見た目、触り心地による癒し効果が高い。キッチンはステンレス素材のキャビネットを使用。耐水性を高めるだけでなく、デザイン面でも木材と融合している。

4.将来を見据えた多様性のある設計

[図表5]将来を見据えた多様性のある設計

 

リビングと寝室の扉を開閉でき、広い空間にもプライバシーを守れる空間にもなる。2階の子ども部屋は間仕切りが可能。大屋根でできた2階のスペースは収納場所にしている。

太陽光発電の投資例…25年保証、驚異の差し引き収支額

耐震性と耐久性が高ければ、太陽光発電の規模も大きくできます。その分、発電量が増えるので光熱費の削減と売電による収入増が期待できるのです。また、国産の太陽光パネルは、30年以上経過しても出力低下が10%程度の実績があり、最終的に発電量の心配もないといえるでしょう。

 

事例の家は太陽光発電を充実させたいから屋根を大きくしたわけではありません。片流れの形状はデザイン性に富んでおり、大屋根にすることで家の安定感も生まれます。さらに、屋根と外壁にはガルバリウム鋼板(アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板)という建材を使用しており、エントランス部分の外壁に使用した木の板ともよく合います。この建材は防水性が高く、耐久性を高める役割も担っています。つまり、家の性能、設備の機能性、デザインをトータルでコーディネートした設計なのです。

 

話を戻しますが、太陽光発電による光熱費の削減と売電収入は、長期間で見るととても大きな数字になります。図表6は、各種保証期間が25年の太陽光発電を設置した場合の費用対効果を示した例です。

 

[図表6]太陽光発電の投資例

 

差し引きの収支を見て驚くことでしょう。太陽光発電を設置することで家の初期費用がプラスになっても、コスパがよい投資というわけです。

 

なお保証期間がこれより短いものでもこれに近い収支が出ます。また、保証期間が短いけれど電気代をより最適化したものも出てきています。シミュレーションをしたうえで選択することをお伝えします。