日本人の約6人に1人は、糖尿病または糖尿病予備群だと推計されています(厚生労働省の「国民健康・栄養調査」より)。そんな糖尿病への対策のひとつに「糖質制限」を挙げる人は多いでしょう。しかし、実はこの糖質制限、むしろ血糖値を下げにくくする危険性があるというのです。いったいどういうことなのか、糖尿病内科医・大坂貴史の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、43歳女性の事例をもとに詳しくみていきましょう。
お米もパンも、甘いお菓子も全部ガマン…43歳女性が〈糖質制限〉を徹底した結果「糖尿病の一歩手前」と診断された驚きの理由【専門医が警告】
誤診を引き起こした「糖質制限中」の検査
「えっと、糖質制限をすると血糖値が上がるんですか? 私が思っていたことと逆なので、混乱しています」
「その可能性があります。わかりやすいように少し乱暴な言い方をすれば、糖質を含む食品を食べなければ血糖値は上がりません。ここまでは、いいでしょうか?」
「はい」
「ただ、糖質制限をしている状態で高糖質の食品を摂取すれば、血糖値が上がっても血糖値を下げるホルモンであるインスリンの反応が遅れたり、悪くなったりします。そして、血糖値が高い状態が続いてしまいます。これが、今の坂田さんの体で起きている状態と考えられます」
だめだ、私はまだ理解が十分にできていない。
「坂田さんは血糖値を下げるために主食や甘いものをすべて抜いて、血糖値を上げない生活を送っていました。つまり、インスリンのほうも反応をしなくていい状態です。要は“サボりグセ”がついたと考えてください。この状態でブドウ糖液を一気に飲む糖負荷試験を受けたため、急激に血糖値が上がったけれど、インスリンが適切に働かずに血糖値が下がらなかったというわけです」
そして、先生は続けた。
「検査の10〜14時間前までは絶食が必要ですが、本来、検査前には糖質を150g以上含む食事を3日以上摂取することが条件なんですよ」
「えっ、そうなんですか!?」
「おそらく検査を受けるに当たって、そういったアナウンスがされていたと思うのですが……」
「とにかくやせなきゃ、糖質を控えなきゃと頭がいっぱいで、検査の受け方の詳細までよく確認しませんでした」
「そうでしたか。ただ糖尿病の一歩手前である“境界型”には該当すると思われるので、血糖値を速やかに下げられる体質を取り戻す必要がありますね」
〈先生からの処方箋〉
血糖値を下げにくい体質になるため、極端な糖質制限を続けるのは危険!
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医