先生、私は糖尿病ですか?…医師が質問に“即答しない”ワケ

そして今日、会社には「有給休暇届」を出して休みをもらい、糖尿病内科のある病院へ足を運んでいる。昨今は休暇を取るのに理由を聞かれることはなく助かっているが、今日も忙しく働いている同僚のことを考えると、なさけない気持ちになる。

窓口でマイナンバーカードと紹介状を渡すと、問診票を書くように促された。糖尿病の家族歴欄には「実父」と記載し、インスリンによる治療中であることも書き添える。そして、これまでの経緯を簡潔に記した。

「坂田加奈子さん、診察室にお入りください」「はい。よろしくお願いします」

ほがらかなO先生とは対照的に、私の顔は険しいものだったに違いない。

「先生、私は糖尿病ですか? インスリン治療が必要ですか? 一生ですか?」

これまでガマンしてきたことが溢れ出るように、言葉が止まらなかった。でも、先生は私の質問に対する回答をすぐにはくれず、問答が続いた。

「糖質制限」をすると血糖値が上がる?

「問診票に書いてあった糖質制限について、もう少し詳しく教えてもらえますか?」

「はい。会社の健康診断で糖代謝検査の結果がC判定でした。太ってしまったのが悪いのだろうと思い、以前に実践して体重を一時的に落とせた糖質制限ダイエットをしました。糖質を減らせば血糖値も上がりにくいから、糖尿病にもいいと思って」

「具体的に減らした食品は何ですか?」

「ご飯、パン、麺などの炭水化物メインの主食は2週間食べなかったです。いも類もほとんど食べず、甘いお菓子もガマンしました」

「主食を抜く糖質制限中に、経口ブドウ糖負荷試験を受けたということですね?」

「はい。『糖質制限をしても血糖値が高いから、糖尿病の治療が必要です』と、検査を受けたクリニックの先生に言われました」

「なるほど……」

と言ってうなずき、少し間をおいてからO先生は話し始めた。

食後に血糖値が高い状態が続いて下がらなかったのは、主食を抜くレベルの糖質制限をしていることが影響したと考えられます。空腹時血糖値だけを見れば、現段階で坂田さんは糖尿病ではなく、薬やインスリンによる治療も必要ありません」

おどろきで言葉に詰まっていると、先生は続けた。

「糖質制限は医師も患者さまもよいものと思っていることが多く、“糖質を減らしても結果が伴わないなら薬の服用しかない”と判断されてしまうことが多いんです。坂田さんのようなケースで紹介状を持参されるのはめずらしくないんですよ」

正直よくわからない……。