糖尿病になると、網膜や腎臓、神経に合併症を発症することがあります。複数の医療機関を受診することが考えられるため、糖尿病連携手帳というものも配布されているそうです。糖尿病専門医である大坂貴史氏大坂氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、糖尿病の治療について詳しくみていきましょう。

糖尿病専門医が伝授…完治が難しい「糖尿病」との“ストレスフリー”な付き合い方【医師の助言】
〈本記事の登場人物〉
横田みずほさん(52歳・女性)
1児の母。冷え性が悩み。糖尿病とサルコペニア肥満※の可能性があると診断され、食事を中心に生活習慣を見直していた。医師から投薬を勧められ不安を感じつつも、糖尿病と向き合っていくことを決意する。
※サルコペニア肥満とは……加齢により筋肉量が減少し、筋力や身体能力が低下した状態の「サルコペニア」と、糖尿病をはじめ高血圧や脂質異常症などを悪化させる「肥満」が重なった状態のこと。
薬の力も借りて血糖値を下げる
「食事について、一気にすべてを変えることは難しいでしょう」
「はい。……あまり自信がありません」
「大丈夫ですよ。食事では、やれることを1つずつ試していきましょう。そうやって食事を改善しつつ、薬も使って血糖値を調整していくように取り組みませんか?」
「薬ですか……」
「今の横田さんはインスリンを出す力が弱くなっているので、薬の働きでサポートしてあげるとよいかなと思います」
「薬を飲むほど悪いんですか? 大変そうです……」
「今回お出しする薬は、1日1錠だけ服用すればいいので、そこまで負担は大きくないかと思います。飲むタイミングは自由ですが、毎日決まった時間に服用するようにしてください」
「それを飲むと、糖尿病が治るんですか?」
「糖尿病が治る・治らないと断定することは難しいんです。血糖値が下がって安定してくれば、糖尿病と定義される基準値を下回ることができ、合併症の進行を食い止めやすくなります。それを目指すというのが、わかりやすいかと思います」
「難しいです」
「そうかもしれません。だからこそ治療を開始して、感覚をつかんでいただければと思います。薬には血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す作用があります。血糖値が高いときにだけ作用するので、“低血糖症状”を起こす可能性は低いです」
「低血糖症状ですか?」
「低血糖になると、冷や汗や動悸 、手足のふるえなどが起こることがありますが、この薬では心配ありません。ただ、服用して何か問題があれば連絡をくださいね」
「……やっぱり怖いです」
「横田さん、目が見えづらくて困るときにはどうしますか?」
「メガネをかけます」
「そうですよね。“薬もメガネと同じ”ようなものと考えてください」
「どういうことですか?」
「老眼などで見えにくくなって生活に支障が出るとき、ピントを合わせやすいようにサポートしてくれるのがメガネですね」
「はい」
「それと同じように、血糖値が高くて体に支障が起こったとき、インスリンを出す力を高めて不具合が起きないようにサポートしてくれるのが薬なんです」
「なるほど……」
「だから、薬のサポートを借りながら、体の様子を見ていきませんか? 生活の改善もしながら血糖値を調整できるようになれば、薬をやめることができますから」
「……わかりました」
〈先生からの処方箋〉
薬は不具合を調整するメガネのような存在。
ネガティブに捉えず、体の状態をよくすることを優先