毎日、ぎゅうぎゅうの満員電車に乗っていると、ふと「田舎に行きたい」と思うもの。さらに子育て中だと「よい環境で子育てがしたい」と考えるでしょう。そこでひとつの選択肢になるのが「地方移住」。実際に理想の子育て環境に身を置く人が増えているといいます。しかし地方移住にはメリットもあれば、デメリットもあるようです。
よい環境で子育てがしたかった…「月収50万円」38歳サラリーマン「年収300万円減」でも地方移住を実現。10年後に長男から言われた「ツライひと言」

地方での生活は順風満帆と思われたが…

「地方移住をしてよかったことは?」と聞かれたら、「家族の時間を大切にできる点」と答える三浦学さん。電車通勤から車通勤になり時間は大幅短縮。そのぶん、子どもたちと過ごす時間が増えました。義実家までは徒歩3分。当初の目論見通り、三浦さん夫婦を立てつつ、孫育てに積極的に関わってくれました。

 

子どもたちは自然のなかで遊ぶ機会が増えました。自宅の家庭菜園では様々な野菜を育て、収穫したものが食卓に並ぶ。都市部の生活では到底考えることができなかった毎日が日常の一部になり、学さんは「移住してよかった」と実感したといいます。

 

地方での生活は順調に思えましたが、10年後、長男(15歳)が高校進学を控えた頃に変化が訪れました。「東京の学校に進学したい」といい出したのです。さらに、「なんでこんな田舎に来たの? 東京にいたほうがよかったじゃん!」と続けました。学さんにとって、この言葉は衝撃的でした。

 

地方の高校は選択肢が限られ、進学実績も都市部の学校に比べて見劣りすることが少なくありません。長男は「もっといろいろな学校から選びたかった」と不満を感じていたのです。

 

文部科学省『令和6年度 学校基本調査』で47都道府県の大学進学率をみていくと、「東京都」がトップで74.2%。全国平均61.2%を上回るのは15の都府県で、三浦さん夫妻が移住した「北海道」は33位で52.8%。地方移住のメリットとして「教育環境の良さ」が挙げられることもありますが、それは必ずしも進学面での優位性を意味するわけではありません。親がよかれと思って選んだ環境が、子どもにとって必ずしも最良とは限らないのです。

 

学さんは長男の言葉を受けて「地方移住は間違いだったのか?」と自問しましたが、最優先すべきは長男の希望を尊重すること。オンライン学習の導入や、都市部の高校を受験するための塾通いをサポートするなどして、可能な限り高校受験をサポート。希望校に無事合格し、今は学さんの実家から学校に通っています。

 

地方移住は親にとっては魅力的な選択肢かもしれません。しかし、子どもが成長するにつれて、親の理想と現実とのギャップが生じることもあるようです。

 

[参考資料]

内閣府『新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(第6回)』

文部科学省『令和6年度 学校基本調査』