余計な上書きをせずに感情を伴って記憶する

余計な上書きをしないことも大切です。だからといって、なにも随時五感から入っていくる情報を取捨選択して記憶するもの・しないものに分けろ、ということではありません。物事を記憶するのに必要のないことまで覚えようせず、ポイントだけを覚えていくのです。賢い人は、要点だけを覚えて、そうでない部分はわざと覚えないようにしています。中心だけ覚えていれば、それに付随する周りのことはあとで調べても構わないのです。

例えば受験生のなかには、世界史の教科書を隅から隅まで覚えようとする人がかなりいます。しかし、最終的に教科書のいろいろな部分を覚えるとしても、本当に受験に役立つ知識を覚えたいなら、まずは問題集からやっていったほうがいいのです。なぜなら、問題集は入試に出やすい部分が「問題」となっている、要するに大事なところだけが載っていて、無駄な部分は省かれているからです。

しかも、問題集を解くことは出力のトレーニングにもなり、長期記憶に残りやすくなります。問題集で基本的なことをマスターしたあとに、教科書や参考書で枝葉を覚えていけば、どんどん頭に入ってくるはずです。また、感情が伴う記憶とか、自分から見て面白いことは記憶に残りやすいものです。ですから、例えば記憶したことを出力するときに、話を工夫して面白くするようにするのも良い記憶術となります。

先に紹介した「文章を書くこと」と組み合わせれば、日々の日記を記すことでアウトプットのトレーニングと認知症の予防になり、さらにそこにひと工夫して面白おかしくすることで、ど忘れをしない埋もれない記憶づくりのトレーニングにもなるのです。

[図表6]長期記憶の主な種類
[図表6]長期記憶の主な種類 出典:『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック院長