認知症を予防するには「小さくてもよいので趣味をもつことがよい」と医師の和田秀樹氏はいいます。本記事では、和田氏が70代、80代を楽しく生きるために知っておくべき「新常識」について著した『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう！』（かや書房）より一部抜粋・再編集して、認知症の予防・進行抑制に役立つ「脳を活性化させるコツ」を詳しく解説します。
（※写真はイメージです／PIXTA）
85歳以上の日本人の5人に2人は「認知症」と診断。医師・和田秀樹氏が教える「認知症」と「ど忘れ」の違い。ペンと紙さえあれば0円でできる〈認知症予防〉に効果的なこと
アルツハイマー病の進行を遅らせる方法：トレーニング次第で脳は活性化
85～89歳の認知症有病率は41.4％
歳をとれば脳は萎縮します。85歳以上の高齢者であれば、症状が出ていなくても解剖をしてみると、ほぼ全員の脳にアルツハイマー型の変化が起きています。厚生労働省の報告では、「認知症」に関しては85歳以上の人の40％強が、テストの結果では認知症と診断されるそうです。
70～74歳では認知症有病率は4.1％、80～84歳で21.8％、85歳～89歳で41.4％と倍増、90歳～94歳では61％となり、95歳以上となると実に79.5％となります（厚労省『都市部における認知症有病率と認知症の生活機能への対応』平成23～24年度）。
アルツハイマー病とはがんのようなもので、脳の神経線維に変性が起きたことにより、異常になった神経線維ができ、それがほかの正常な神経線維の働きを邪魔することによって発症します。しかし、たとえアルツハイマーの細胞が脳のなかの1割だとしても、残りの9割が正常であれば、そこをトレーニングすることによって、若い人以上の働きをさせることもできるのです。
70歳を超えても発言や行動が素晴らしく、若手議員にも非常に慕われて、国民にも人気があったある国会議員がいました。その方の脳をCTで撮ってみると、萎縮が大変に激しかったのです。つまり、実際は脳のかなりの部分が死んではいたのでしょうが、残りの部分を使い、自分の理想のために懸命に頭を使う毎日の激務がトレーニングとなり、脳が若い人以上に稼働していたのだと思います。
［図表5］年齢階級別の認知症有病率 出典：認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」（平成23～24年）総合研究報告書
アルツハイマー病だったアメリカ大統領
実名をあげられる有名人でいえば、アメリカのロナルド・レーガン大統領がいます。彼は77歳で退任した5年後に、同じ病気の人の励ましになればと、自分がアルツハイマー型認知症であることを告白しました。
急性のものもありますが、ほとんどのアルツハイマー病はゆっくり時間をかけて進行します。そのときには会話が通じないレベルになっていたので、恐らくは5年前の在任中にも初期、つまり軽い記憶障害のレベルとはいえ、アルツハイマー病に罹患をしていたのだと思われます。
しかし、大統領としての激務が彼の脳への刺激となり、見事に8年の任期を務めあげました。77歳という、大統領としては史上最高齢でホワイトハウスをあとにしたときに、多くのメディアから「これなら3期目もいけたかもしれない」という最高の賛辞が贈られました。
彼は自分がアルツハイマー病だと認めていました。そのため大統領を引退後も、自宅にホワイトハウスの執務室を再現し、そこで新聞を読むなどの執務を毎日数時間行っていました。その努力によって症状の進行を食い止め、2004年6月5日に、93歳と120日という当時の歴代アメリカ大統領としては最長寿の年齢で大往生を遂げました。アルツハイマー病にかかっていたとしても、ちゃんとトレーニングをしていれば素晴らしい能力を発揮でき、鍛え続けていればその状態を長く保てるのです。
