認知症を予防するには「小さくてもよいので趣味をもつことがよい」と医師の和田秀樹氏はいいます。本記事では、和田氏が70代、80代を楽しく生きるために知っておくべき「新常識」について著した『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)より一部抜粋・再編集して、認知症の予防・進行抑制に役立つ「脳を活性化させるコツ」を詳しく解説します。
85歳以上の日本人の5人に2人は「認知症」と診断。医師・和田秀樹氏が教える「認知症」と「ど忘れ」の違い。ペンと紙さえあれば0円でできる〈認知症予防〉に効果的なこと
ど忘れ防止のための5カ条:出力障害〝ど忘れ〟をしない脳のつくり方
ど忘れは病気ではなく前頭葉の老化現象
認知症とは似て非なるものに「ど忘れ」があります。認知症が脳への「入力障害」であるのに対し、ど忘れは脳からの「出力障害(想起障害)」です。本当は記憶されているのに埋もれて出てこない、という状況が「ど忘れ」なのです。
例えば、「入力障害(認知症)」の人と「出力障害(ど忘れ)」の人が同時にある名前を覚えようとしたとします。時間が経ってから、2人が同時にその名前を思い出そうとしても、どちらとも思い出すことができません。しかしその原因が異なります。
認知症である場合、覚えたはずの名前を人に教えてもらったり何かで見聞きしても、その名前に覚えがありません。つまり記憶(インプット)ができていないのです。しかしど忘れだった場合は、何かヒントさえあれば思い出すことができます。インプットはできていても、思い出すこと(アウトプット)に難があっただけなのです。
80歳までのど忘れは、前頭葉の老化現象であり、ほとんどは認知症とは無関係です。長期記憶は大脳皮質の側頭葉に書き込まれています。ど忘れは、記憶のインプットとその蓄積に関係する側頭葉の問題ではありません。実際、前頭葉と比較すると、側頭葉の老化の始まりは遅いのです。しかしながら、前頭葉は側頭葉から目的の記憶を引き出す役割を担っているのに、その前頭葉が40歳を超えるぐらいから、働きが悪くなり、目的の記憶が見つけにくくなるのです。これが、前頭葉の老化現象=ど忘れということです。
ど忘れと認知症の違い
加齢による物忘れ(ど忘れ)
・物忘れの自覚がある
・ヒントがあれば思い出せる
・体験したことの一部を忘れている
・理解力や判断力に支障はない
・生活への支障はない
・物忘れの急激な進行はない
・人格は変わらない
原因▶脳の生理的な老化
認知症による物忘れ
・物忘れの自覚がない
・ヒントがあっても思い出せない
・体験したこと自体(体験のすべて)を忘れている
・理解力や判断力に支障がある
・生活に支障がある
・物忘れが進行する
・人格が変わることがある
原因▶脳の神経細胞の変性や脱落