認知症を予防するには「小さくてもよいので趣味をもつことがよい」と医師の和田秀樹氏はいいます。本記事では、和田氏が70代、80代を楽しく生きるために知っておくべき「新常識」について著した『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)より一部抜粋・再編集して、認知症の予防・進行抑制に役立つ「脳を活性化させるコツ」を詳しく解説します。
85歳以上の日本人の5人に2人は「認知症」と診断。医師・和田秀樹氏が教える「認知症」と「ど忘れ」の違い。ペンと紙さえあれば0円でできる〈認知症予防〉に効果的なこと
ど忘れを防止するための5つのポイント
さて、そんなど忘れをしない脳をつくるためのポイントは、以下の5つです。
①前頭葉を鍛えるためにアウトプットのトレーニングをする。
②良質の睡眠をしっかりとる。
③脳にしっかりと栄養が行き渡るように食べる。
④運動をする。
⑤ストレスが少ない生活をする。
この5つには「どれが大切」という順序はありません。全て行うことにより、相互にプラスの関係を生み出し、脳が衰えないようになるのです。
「百ます計算」で有名な隂山英男先生の例を見てみましょう。彼は最初、1クラスの児童が18人の小さな学校の教師でしたが、受け持った児童たちのその後を追跡してみると、8人が国立大学に現役で合格していたのです。その秘密は「百ます計算」と「早寝早起き朝ごはん」にありました。その後、超名門小学校の校長を務めたとき、同じことを児童たちに徹底させた結果、わずか1~2カ月で勉強に対する意欲と成績が急速に高まり、「名教師」と呼ばれました。
「百ます計算」「早寝早起き」「朝ごはん」は前述のポイント①~③、「運動」と「ストレス」については、子供ですから大人とは違い、放っておいても走り回り、運動をしますし、大人に比べればストレスはありません。子供の話だと思われるかもしれませんが、脳を活性化させる原理は、大人も子供も同じなのです。
ど忘れしないための記憶術:埋もれた記憶を掘り返す方法と記憶を埋もれさせない方法
思い出すために大切なきっかけ
例えば何年かぶりに、長崎に行ったとします。あるちゃんぽん屋さんの前を通ったときに「ああ、ここまだやってるんだ」と記憶が呼び起こされ、誰と食べたとか、何を食べたとか、次々に思い出してきます。それまでは全く思い出すこともなく、覚えていたことさえ忘れていたのに、です。
脳のなかにないもの=書き込まれていないものは思い出すわけがありません。そのちゃんぽん屋の思い出というのは、実は脳にちゃんと書き込まれていたのです。
ではしっかりと書き込みはされていたのに、実際に通りかかるまで思い出すことができなかったのはなぜでしょう? それは、その記憶の上にたくさん上書きがされてしまっていて、記憶が引き出せなかったからです。このような場合は、何かきっかけがないと出力(想起)されないものです。
人間の脳には常に莫大な情報が書き込まれていますから、古い記憶や取り出す頻度の少ない記憶は奥底に埋もれていき、そういった「きっかけ」がないと再出力されなくなるのです。ど忘れをしない脳をつくるためには、奥底に埋もれさせないように頻ひんぱん繁にアウトプットをして、引き出すトレーニングをする必要があるのです。