アルツハイマー型で起きる脳の変化:誰にでも起こる脳の変化と一緒に生きる

特別ではないアルツハイマー型の変化

人間の脳細胞の寿命は140年と言われています。だからといって、脳が140年間元気で働き続けてくれるわけではありません。脳は、だいたい80歳くらいで老化が本格化してきます。平均寿命が60歳前後であった昔なら、脳の老化よりも先に天寿を全うしていたので、現在のように認知症の症状が顕著に出るような人も少なかったでしょう。

しかし、医学の進歩と、栄養状態や衛生管理の充実によって平均寿命は延び、2020年における日本人男性の平均寿命は81.64歳、女性は87.74歳となっています。

一方、85歳ぐらいになれば、誰にでもアルツハイマー型の変化が脳に起こります。つまり現代社会では、認知症にならないのは無理だということです。今後、医学が発達すれば、アルツハイマー型の変化が起こる時期を遅らせることができる可能性はあります。しかし、現在の段階では、脳にアルツハイマー型の変化が起こることは避けようがないのです。

しかしながら、同じ程度にアルツハイマー型の変化が起こっていても、すごくボケた人もいれば、わりとちゃんとした人もいます。それはなぜかというと、普段、頭を使っているかどうかの違いなのです。つまり、医学の発達を待たない限り、現段階では脳がアルツハイマー型の変化を起こすのを止める方法はありませんが、アルツハイマー型の変化が起こった脳でもしっかりと使うことは可能、ということなのです。

「認知症になったら終わりだ」と考えてしまいがちですが、認知症というのは、軽いうちであれば、ほぼ今まで通りに何でもできます。

認知症にも症状がいろいろとあります。例えば、「ついさっき昼食を食べたことすら忘れてしまう」ほど症状が進んでいる人もいれば、「昼食を食べたことは覚えてはいても、何を食べたのかを覚えていない」という軽症の人もいます。また、この後者のケースでは記憶はできているけどそれが出てこない「出力障害(想起障害)」である可能性もあります。俗に言う「ど忘れ」です。

正常な脳とアルツハイマー型の変化がおきた脳

85歳前後になると、誰にでもアルツハイマー型の変化が脳に起こり始めます。「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積するとシミのようなもの(老人斑)を作り、脳細胞を殺す働きをしてしまうのです。現代医療ではこの変化を避けることはできません。しかし進行を遅らせたり、変化をした脳をしっかりと働かせることは可能です。

[図表4]アルツハイマー病の脳に現れる変化
[図表4]アルツハイマー病の脳に現れる変化 出典:『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』