趣味による認知症の予防効果:趣味を持って意欲的に活動することが認知症を遠ざける

趣味を持ち続けることは脳を活性化させる

趣味がない人は、定年後、頭を使わなくなりますから、認知症になるかどうかは別にしても、ボケたようになりがちです。さらに、前頭葉が弱って意欲が衰えてしまうようになると、本当に認知症になったり、なった際には速く進行したりする確率が高まります。一方、趣味のある人は、仮に将来、認知症になってしまっても進行が遅い傾向にあります。

趣味としておすすめなのは、文章を書くことです。お金はほぼかからず、いつからでも始められます。最も手軽な趣味です。認知症になった人に対して医者ができることは、脳を活性化させる薬を使って少しでも脳を動かせるようにすることと、デイサービスや買い物、料理などをすすめて、頭を使わせることです。このときにものを書く趣味があれば、それをやってもらえればいいのです。

認知症になってからでは、趣味を見つけてもらうことは困難です。40代、50代、60代のまだ脳がボケる前から文章を書いていれば、それが脳の老化予防になりますから、認知症にもなりにくいのです。仮に脳が衰えても、認知症の発症が遅くなり、たとえ発症したとしても、その後の進行が遅くなる可能性が非常に高いのです。

もし2年間でも認知症の進行を遅らせることができれば、人生のなかで認知症患者として過ごす期間を2年間減らすことができます。その分、人生の質を上げて楽しく過ごせるのです。

[図表2]趣味の種類の数と認知症発症の関係
[図表2]趣味の種類の数と認知症発症の関係 出典:
日本老年学的評価研究「日本公衆衛生雑誌2020年号」
※年齢、性別が明らかな65歳以上の要介護認定を受けていない高齢者5万6,624人のうち、 趣味に関連する質問に回答した患者で、365日以上フォローアップできた4万9,705人が対象。趣味なしを基準(1.0)として趣味の数によるハザード比の変化をグラフ化したもの。
[図表3]趣味の種類の内訳
[図表3]趣味の種類の内訳

日々の出来事を記す日記でも十分な効果

文章は特別なことを書く必要もありません。日記などでも十分です。京都の駿台予備校で名物講師であった表三郎さんは、京大式カードというB6サイズのカードに、今日行ったことを箇条書きにする日記を付けていました。そこに自分の意見は何も書かれてはいませんが、その日に起こったことや、行ったことを書くことが彼にとって最高のアウトプットになったのだと思います。

しかも、のちに彼はその日記について『日記の魔力 この習慣が人生を劇的に変える』(サンマーク出版)という著書にまとめ、ベストセラーとなりました。

日記以外にブログ、ユーチューブでも構いません。脳を活性化させるためにはインプットよりもアウトプットを意識しましょう。最も簡単なアウトプットの方法は「文章を書く」と「他人と話すこと」です。これらは脳にとって最高の記憶の引き出し=アウトプットのトレーニングとなり、脳の健康を保つ効果があるのです。