がんは切らない・治療しない:高齢者にとって早期発見・早期治療は無意味

私ががんの手術をしない理由

私は、高齢者にはがん治療は必要ないと考えています。70代以降になるとがんを患う人も増え、がんとの関わり方はこの年代にとって切っても切り離せないテーマです。そのなかで重要なポイントとなるのは、がんが見つかったときに、手術をするかどうかという問題です。私は、もしもがんが見つかったとしても、それが痛みを伴ったり、食道などで通過障害が起こらない限り、手術をして切ったりしません。

現在、がんについては、早期発見・早期治療が有効であるという考え方が主流です。中高年が早期発見・早期治療をすることには意味があると思います。しかし、70代以降であれば、早期発見・早期治療にほとんど意味はありません。

早期発見であれば、自覚症状がある人はほとんどいません。がんが発見されなければ、4~5年くらいは自覚症状のない状態が続き、これまでと同じような生活が送れます。しかし、がんが発見されて、手術をしたことで一気に身体が弱り、ほかの病気にかかったり、寝たきり状態になって寿命を縮めてしまうことはよくあります。

がんであるということを、知らないほうが高齢者にとってはいいのです。80歳を過ぎるような人は、特に必要がないと思います。歳をとればとるほど、がんの進行が遅くなり、転移しにくくなるからです。もちろん、私はがんの専門家ではありません。しかし、手術や化学療法も含め、がんの治療を受けた高齢者をたくさん見てきました。その多くの人が幸せな術後を過ごしていなかったのです。