数値のみで判断せずに身体の状態を見極める

コレステロール値を下げると、それを材料にしてつくられる男性ホルモンも減ってしまいます。男性ホルモンは心身の健康の維持に必要不可欠な成分で、これが減少すると、元気や意欲がなくなります。筋力が低下したり、感情が不安定になったりもします。コレステロールは、若々しく、元気な老後を過ごすためには、とても大事で必要なものなのです。

「血圧を下げましょう」という健康指導が徹底されますが、実際はどれくらいまで下げるかは曖昧です。昭和30~40年代の日本人の栄養状態が悪かった頃には血圧150くらいでも血管が破れることがありましたが、現代では、動脈瘤がない限り、血圧が200でも破れることはありません。これは80歳を過ぎた人でも同じです。しかし、これにも個人差があります。例えば血圧180で頭痛や吐き気などがある場合は、その人にとって180は高いということになるので、血圧を下げる薬を飲むべきです。

つまり、数値だけで「異常」と判断し、薬を飲み続けるという選択は間違っているということです。数値に惑わされず、自分の身体の状態から判断するのが賢い選択です。ちなみに私の場合は、170ぐらいが頭もしっかりして体調が一番いい数値です。

これらをトータルで考えると、薬の服用にこだわらず、症状によって柔軟な対応をしたほうが、元気な70代・80代を過ごせると私は考えています。つまり、血圧や血糖値、コレステロール値を下げることは、動脈硬化には効果的ですが、それまで維持してきた活力が奪われたり、がんのリスクが高まったりするわけです。

血圧、血糖値、コレステロール値を下げる薬を飲むということは、これからの生活の質を落として生きるという、マイナスの選択の可能性が高いのです。

[図表5]日本人の死因の割合と70代以上の死因トップ3(総数)
[図表5]日本人の死因の割合と70代以上の死因トップ3(総数) 出典:厚生労働省資料「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」