
「金銭的負担は一切なし」の誘い文句にのって…親子同居開始
――もう帰りたくない……
そう肩を落とす村上直樹さん(仮名・41歳)。時計の針は午後8時を指しています。普通であれば、残業を済ませて、家族の待つ自宅へ急ぐところですが、村上さんの足取りはずいぶんと重いようです。
1年ほど前、村上さんの親から「二世帯住宅にするから一緒に住まないか」という話がありました。当初、「お義父さん、お義母さんと一緒なんて嫌よ。適度な距離がないと、うまくいかないものでしょ。嫁と姑なんて」と難色を示した村上さんの妻・美咲さん(仮名・36歳)。しかし工務店が持ってきた図面をみて、180度方向転換。玄関も水回りもリビングも、すべて別々。二世帯住宅といっても共有部分は敷地くらいなもので「同じ敷地に建つ、壁で繋がった2つの家」といったものだったのです。
さらに村上さんの親からは「建て替えの費用はすべて私たちが出す」と、建て替えに際し、費用負担は一切なしと破格の条件。自分たちの引っ越し費用や、インテリア・家電の購入費程度で、新築戸建てに住むことができるわけです。これくらいであれば、ローンを組む必要はありません。
経済的なメリットと、両親の老後の安心。それらを天秤にかけ、村上さんも同居を決めたのでした。
【二世帯住宅「子世代の同居理由」上位5位】
1位「親世代の老後を考えて」…62%
2位「何かあったときに助け合えるから」…54%
3位「親世代だけでは何かと心配なので」…36%
4位「配偶者や自分の育った土地に愛着があるから」…34%
5位「建設時の経済的負担が少ないから」…34%
出所:旭化成ホームズ株式会社『親子同居のくらしと意識に関する調査』
――当時の私は、二世帯住宅での同居を軽く考えていました。同じ敷地に建っているだけで、別々の家。面倒なことなんて起こるわけがないと思っていたんです