
時間をお金で買う…郊外のマンションから都心タワマンへ
東京都心にそびえ立つ高層マンションに引っ越しをした橋本拓也さん(仮名・35歳)。家賃はワンルームで28万円。さすが、東京都心に建つタワマンです。そんな家賃が払える橋本さんは間違いなくエリートビジネスマン。30代で課長に昇進し、月収は65万円、年収は1,000万円を超えます。橋本さんが勤める会社では課長のほとんどが40代後半。橋本さんのスピード昇進は社内でも話題になっていました。
――いえ、単に若いからうまい具合に利用されているだけです。社畜ですよ、社畜
橋本さん、課長によくいるプレイングマネージャー。それまでの業務に加えて部下のマネジメントもプラス。業務時間は一気に増えました。何とか業務をこなすために、どうにかして時間を確保したい。削れるといえば通勤時間しかない。それまで会社まで電車を使って1時間ほどの郊外に住んでいましたが、昇進をしてしばらくしてから現在住んでいるタワマンに引っ越してきました。時間を金で買うという発想。会社まで徒歩で10分、走れば3分だといいます。さすが、自ら「社畜」というだけあります。
またもうひとつ、今住んでいるタワマンを選んだのには理由があります。それは「自分へのご褒美」。
――課長になってから、朝から晩まで仕事一色。わずかなプライベートな時間くらい優雅に暮らすことができたら、仕事も頑張ることができると思いました
タワマンの20階。地上60メートルからの眺めは、それまで住んでいた郊外のマンションとはまったく違うものでした。大きくとられた窓から望むのは東京の摩天楼。周囲にも高いビルが多いので「東京の街を見下ろす」とまではいきませんが、そこでの生活は優雅そのもの。
――毎朝、窓からの眺望を前にコーヒーを飲む……多忙な毎日のなか、唯一の贅沢でした
少々変わった理由でスタートした、東京都心のタワマン生活。しかし優雅な生活はわずか半年で終わりを告げました。苦笑いを浮かべながら、橋本さんは当時の状況を振り返ります。
――仕事が忙しいのに加えて、社内のやっかみに本当にうんざりして。会社にいる意味がわからなくなりました