
再雇用も「老害」と言われ退職を決意
5年前、小川浩さん(仮名・60歳)は60歳で定年を迎えました。定年後の選択肢は大きく3つ。再雇用で働き続けるか、転職して新天地を求めるか、退職して完全に仕事から引退するか。小川さんが決めたのは、再雇用で働き続けることでした。
――仕事を辞めてもすることがないですし、転職をするほどの気力もない。慣れ親しんだ職場で働き続けることがベストだと思いました
再雇用により、立場は契約社員に。それまであった部長という肩書はなくなり、一般社員のフォロー的立場にまわります。それにより給与は7割弱減額。月収25万円ほどになります。
――定年直前まで部長でしたが、そんなの関係なく、再雇用では(給与は)一律でした
しかし、給与以上に問題だったのが、職場での立場。
――現役社員のフォロー的な立場になったのですが、周りからは「老害」なんて陰口を叩かれる始末で……。よかれと思ったことがすべて裏目に出てしまい、「もうここには私の居場所はない」と感じるようになりました
働き続ける気力を失い、定年からわずか半年で退職を決意。退職を決めたときの心境を尋ねると、小川さんは少し寂しそうな表情を浮かべます
――正直、やっと解放されるという安堵感と、少しばかりの寂しさが入り混じっていました。これで長年続けてきたサラリーマンも終わるわけですから
退職後は、パート勤めの妻の収入とそれまでの貯蓄を取り崩しながらの生活。無収入という立場に肩身が狭くなる思いだったといいますが、それでも退職前、職場で感じた惨めな思いに比べたら何てことはないといいます。