「年金の受取額を増やしたい」と「繰下げ受給」を選択する人が徐々に増えています。お金の心配がない穏やかな老後、そんな日々を思い描いていて……しかし何が起こるかわからないのが人生。なかには「繰下げ受給」を選択したことを悔やむ人も。
真面目に生きてきた自分がバカでした。〈月収22万円〉〈積立貯金で2,000万円〉69歳サラリーマン「働けるうちは働こう」と〈年金の繰下げ受給〉を選ぶも急転直下。宙を仰ぎ号泣したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

十分な貯金がある…それでも「年金の繰下げ受給」を選択

高校を卒業後、就職。何回か転職し、直近では定年のない会社で働いていたという石井聡さん(仮名・69歳)。「働けるうちは働こう」と真面目に仕事に打ち込み、60代半ばには2,000万円もの貯蓄ができていました。

 

――2,000万円あれば、夫婦で暮らしていけると思いましたが、何かあったときのためにできるだけ貯金には手を付けたくありませんでした

 

65歳から受け取れる老齢年金は月14万円ほど。2歳年下の妻は、月9万円ほどの年金を受け取れる予定です。夫婦合わせて月23万円。決して少なくはない金額ではあるものの、仕事を辞めたあとの生活を考えると少し不安が残りました。何かあったときのために、もう少し余裕がほしい……そのようなときに知ったのが「年金の繰下げ受給」。

 

老齢年金は原則65歳からの受給開始ですが、希望すれば60~75歳の間で受給開始にできます。通常よりも早く受け取るのが「年金の繰上げ受給」。対し、遅く受け取るのが「年金の繰下げ受給」です。繰下げ受給では、1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金が増額。75歳まで繰り下げると84%と、約2倍の月受取額にすることができます

 

*昭和27年4月1日以前生まれの場合、繰下げの上限年齢は70歳までとなりますので、増額率は最大で42%

 

老齢基礎年金・老齢厚生年金それぞれについて増額され、増額は生涯続き、どちらか一方のみ繰下げすることも可能。たとえば石井さんが基礎年金だけを65歳から受け取り、厚生年金だけを75歳まで繰り下げたとしましょう。65歳からは月々6.8万円ほどを受け取りながら、75歳から増額となった厚生年金月13.2万円、合計20万円を受け取る……そんな受け取り方もできるわけです。

 

――働いているうちは年金を受け取らず、将来、受け取れる年金を増やせたら

 

そう考えて、石井さんは繰下げ受給を選択。65歳で月14万円の年金が、75歳で月25万円になることを夢見て。