年を重ねても働くことができる環境が整いつつありますが、それでも年齢とともに体の自由がきかなくなっていくなか、いつかは仕事から完全引退、という日が訪れるものです。しかし「一生、働かないと生きていけない」とため息を漏らす人も珍しくはありません。
お先真っ暗だよ…〈年金月3万円〉〈時給1,200円〉早朝3時から働く新聞配達員の男性(75歳)、足腰に激痛走るも働くしかない「厳しい現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

自転車こぐのも大変…75歳男性、それでも新聞配達を続けるワケ

中島実さん(仮名・75歳)。早朝3時からの新聞配達の仕事を始めて20年になります。時給は1,280円。仕事は6時過ぎには終わり、毎月の収入は13万円ほどになるといいます。

 

――最近は足腰が痛くて。自転車をこぐのもひと苦労

 

新聞配達員は、パート・アルバイトの占める割合が高く、都市部では、配達の仕事をすることで新聞社・販売所の奨学金を受けながら大学・専門学校に通う学生もいます。配達区域の広さや受け持ち軒数によって異なりますが、新聞社から届いた朝刊に折り込み広告を入れて配り終えるまで2~4時間。夕刊の配達は2時間ほどかかります。また新聞の休刊日は最も多い新聞でも年12回。配達員は交替で休日を取るのが一般的です。さらに勤務が早朝であること、悪天候でも配達は休めないことなど厳しい面もあります。

 

――最近は新聞をとる人が減ったいるから配達範囲が広くなって……大変だよ

 

一般社団法人日本新聞協会によると、新聞の発行部数は今から20年ほど前の2004年に5,302万1,564部だったのが、2024年には2661万6,578部と半減。中島さんのように新聞配達員の仕事にも影響しているわけです。

 

――病院に行きたいけどお金もないしさ

 

中島さんは、足腰に激しい痛みを感じながらも、仕事を続けています。しかしその表情は、疲労と諦めが入り混じったもの。高齢での無理な労働は、中島さんの健康状態を悪化させているのです。しかし、それでも働かなければ生きていけないのが現実です。

 

――こんな年になってまで、体を酷使して働くとは思ってもみなかったよ。すべては自分のせいだけどな

 

75歳といえば後期高齢者。多くの人が仕事からは引退し、年金を受け取り生活しています。しかし中島さんには働かないといけない理由があります。それは年金の受取額が圧倒的に少ないこと。