生活に不自由はないが…重くのしかかる「50」という数字

「離婚してからずっと実家に身を寄せているので家賃などの出費はない。これは助かるけど劣等感はありますよ。独り身で職は不安定、将来も見えないから」

最近は50歳という年齢が重たく感じる。

「テレビ番組で人気女優が、お母さんは48歳と話していたり、就職した男の子が初めての給料で両親にプレゼントしたというレポートで、父親が52歳で母親は50歳だというのを見るとショックよ。自分にも成人した息子娘がいてもおかしくないのだから」

たまに回ってくる回覧板の訃報で、亡くなった人の年齢が40代後半から51、2歳ということもあり、自分もいつ何があるか分からないと不安になってしまう。

「50歳って精神的にガツンと来ますね。そうか、人生の後半なのよねって思います」

こんな富永さんのことを心配してお兄さんが再婚の話を持ってきた。

「兄が仕事で付き合いのある会社の役員という人で54歳。先妻さんとは死別していて2人の息子は社会人と大学2年生だということでした。兄からこの先ずっと独りでは将来が心配。両親だっていつかは遠くへ行ってしまう。下手したら路頭に迷うことになるぞとやられました」

いきなり後妻の口とは心穏やかではないが、自分に対する社会の評価はこんなものなのだろう。

「女性活躍の推進というけれど対象は正社員だけ。自治体の支援も既婚者で学齢期の子どもがいる世帯しか念頭にない。独身、子なし、非正規の中年女なんていないものとして扱われる。まるで透明人間みたいに」

自分は女の格付けで最下位、味噌っかすみたいなもの。こう考えるのは被害妄想か……。

「何が悪かったのか。どこが分水嶺だったのか。それが分かったらその時まで戻って人生をやり直したい」

そんなことは不可能だけど。

増田 明利
ルポライター