長生き=幸せとは限らない?50歳になって考える介護問題

〈座談会の参加者プロフィール〉


・早瀬祐壱(50歳)

74年生まれ/97年大学卒/非鉄金属会社勤務、法人営業を担当する管理職。家族は妻(小売業パート)と一男一女
 

・田淵智宏(51歳)

73年生まれ/96年大学卒/リース会社勤務、信用調査、債権管理などの業務に従事。家族は妻(専業主婦)と二女
 

・望月稔(52歳)

72年生まれ/95年大学卒/流通業・準大手スーパー勤務、神奈川県内の中型店で副店長を務めている。家族は妻(美容師パート)と一男。
 

・菅原雅史(53歳)

71年生まれ/94年大学卒/物流業・営業所長。家族は妻(保育士・非常勤)と一女。
 

・安田美奈子(54歳)

70年生まれ/91年短大卒/短大卒業後は生命保険会社に就職、結婚後も勤めていたが出産のため退職。現在は主婦兼たまにパートタイマー。家族は夫(科学薬品メーカー技術職)と二男。

――50代に入ると自分の親も高齢になっていますよね。介護とか支援も必要な場合があるでしょうが備えはなさっていますか?

菅原:わたしのところは、父は既に亡くなっています。母が昨年80歳になったのですが自分の意志で老人ホームに入りました。自宅を賃貸に出してその家賃収入と年金でどうにか費用負担できるので。

望月:あなたの親はあなたとあなたの姉弟で面倒見てください、わたしの親はわたしと兄が世話をします。こういう取り決めにしています。配偶者の親は所詮他人、責任があるのは実子ですから。

早瀬:わたしの両親は共に80歳だけど、今のところは2人暮らしで特に問題なく過ごせている。

安田:だけどその年齢だとちょっとしたきっかけで重大な事態を招くことがありますよ。転倒して骨折でもしたらそのまま寝たきりになってしまうこともあるそうですから。

菅原:寝たきりになると認知症にもなりやすいんでしょ。高齢になると食べ物を上手く飲み込めなくなるから誤嚥性肺炎のリスクもあるし。

田淵:わたしの両親はもう鬼籍に入っているので介護の心配はない。父は69歳のときに膵臓癌で、母は脳梗塞74歳で亡くなっているんです。ちょっと早かったなと思いますが、介護離職とか介護離婚ってあるでしょ。わたしも弟もそんなことにならずに良かったと思う。

早瀬:嫌な話だけどたまに介護殺人事件ってあるからな。

望月:昔はこんなに長生きしなかったですよね。

安田:そうよね。子どもの頃に親の伯父(叔父)、伯母(叔母)、その他の縁戚者のお葬式に連れていかれたことがあったけど72歳前後で亡くなった人が多かった。喜寿(77歳)を過ぎていたら、そりゃ長生きだ、大往生だと言っていましたよ。

菅原:昭和40年代から50年代前半だと長生きする人もいたけど、一方で70歳を迎えられず亡くなる人も多かったね。80歳になっても元気な人は珍しかった。

田淵:今みたいに医学が発達していなかったし、重篤な状態になったら延命したり蘇生したりしなかったからね。

安田:ご飯が食べられなくなって2か月ぐらいしたら終わり。家族はその間だけ世話すればいい。こんな感じだったわ。

望月:今はどう見ても駄目だと思うけどいろいろな管や計器を繋がれて心臓だけは動いているということもあるじゃない。あれはかわいそうだと思う。

早瀬:うちの親は延命なんて絶対しないでくれと言っている。だけどそのときになったら「もういいです」「終わりにしてください」と言えるか分からないな。

菅原:長生きが必ずしも幸せとは限らない。そう思うことがあるよ。

田淵:ピンピンコロリというのが本人も家族もありがたいですよね。

一同神妙な面持ちで頷く。