1971年~1974年に生まれた団塊ジュニア世代。好景気に沸く中学・高校時代に描いた“明るい未来”とはかけ離れた現実を生きている人も少なくありません。新卒で商社に入社後、48歳まで“安定のホワイトカラー”だった稲葉彬さん(仮名)もその1人です。ルポライター増田明利氏の著書『今日、50歳になった 悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)より、50代の“生の声”を紹介します。

大失敗でした…年収240万円の51歳男性、商社マンから「フリーター」に転身した“まさかの理由”【ルポ】
休日返上はあたりまえ…掛け持ちでバイトに励む51歳男性の日常
氏名/稲葉彬(51歳)
出身地/埼玉県春日部市
現住所/東京都北区王子
最終学歴/96年大学卒業
職業/フリーター
年収/240万円前後
家族構成/妻47歳(税理士法人パート)、長女18歳(高校3年生)、次女16歳(高校1年生)
50歳になって思ったこと/もう後がないという不安。失敗したという後悔の念
2月23日の天皇誕生日から土日を含めた3連休の中日。繁華街や観光地は多くの人で賑わっていたが稲葉さんは休日返上で臨時のアルバイト。「世間並みに休みたいし、遊びにも行きたいけどお金を稼がないとね」
この3日間の仕事は平和島の倉庫団地にある青果卸会社での商品仕分け。「時給1,300円なので1日8時間として1万400円。3日皆勤したら3万1,200円になる。わたしにとっては大きな金額なんです」
1日働いたら先月払った虫歯の治療費が回収できる。2日だったら石油ファンヒーターを買い換えられる。3日だったら住宅ローンの半分ぐらいが賄える。休みたいとか疲れるなんて言っていられない。
現在の稲葉さんは求職活動中でいくつかのアルバイトを掛け持ちして生計を維持している。本人曰く「恥ずかしながらいい歳してフリーター。親兄弟、親類縁者、学校時代の友人などにいまの状況は知られたくない」という。
「普段は弁当屋の配達をやっています」
勤めているのは給食弁当屋で、小さな事業所・高齢者施設・保育園などに昼食弁当を届ける、容器の回収をするというのが仕事だ。
この仕事は10時から14時までの4時間。一度帰宅して休んだあとは17時から21時30分まで食品スーパーで商品陳列、レジ打ち、閉店後の清掃などをやっている。
「1日8時間30分働いているけど時給はどちらも1,200円なんです。これだけでは月収は21万円がやっとなんです。これでは生活が成り立たない、だから単発の日払いアルバイトや日雇い派遣をやることがあるんです」
どちらも立ち仕事なのでもうすぐ52歳になろうかというおっさんには堪える。