「匿名組合型」では、相続税の節税メリットが得られないワケ
一方、「匿名組合型」と呼ばれるタイプの不動産小口化商品では、各投資家が事業者と匿名組合契約をそれぞれ結び、投資家が事業者に出資を行います。事業者は投資家から集めた出資金を元手に不動産を購入し、賃料収入を配当として投資家に分配します。
匿名組合契約は商法によって定められた約束事で、投資家が事業者に出資し、その見返りに事業収益の分配を受けるという取り決めです。「匿名組合型」の不動産小口化商品では事業者が不動産の所有者となるため、個々の投資家の氏名が登記されることはありません。
物件の運営・管理を事業者に一任しながら、家賃収入の分配を受けられる点は「任意組合型」と共通しています。しかし、先に述べたように「匿名組合型」で投資している賃貸物件の所有者は事業者であることから、投資家が出資したのはあくまで金銭であるというのが税制上の解釈で、「任意組合型」のような相続税の軽減効果は得られません。
分配金については、不動産所得とみなされる「任意組合型」とは異なり、「匿名組合型」の場合は雑所得として扱われ、他の所得との損益通算は認められていません【図表4】。一方、不動産所得の損失は給与所得などの他の所得と損益通算できますが、2005年度税制改正により、任意組合型の不動産小口化商品による損失は他の所得と損益通算できなくなりました。2006年以降の各年分の不動産所得の計算上、組合事業から生じた不動産所得の損失金額についてはなかったものとみなされ、他の所得との損益通算はできなくなったのです。
相続対策を考えるなら「任意組合型」不動産小口化商品の検討を
ここまでの話をまとめると、「任意組合型」と呼ばれるタイプの不動産小口化商品は、通常の不動産と同様の税制が適用され、相続税負担を軽減できるのが大きなメリットです。小口化されているので複数の相続人の間で分けやすく、そういった観点からも相続対策に活用しやすいといえるでしょう。
ただし、出資方法が「現物出資型」の場合は注意が必要です。投資家が共有持ち分を購入して任意組合に現物を出資する方式になっているため、自分の氏名が登記されるとともに、登記費用がかかってくるからです。その点、「金銭出資型」では投資家の氏名が登記されず、その費用も発生しません。
「任意組合型」の不動産小口化商品では、1口=100万円〜、運用期間=10年以上といった条件で設定されるケースが主流となっています。1棟ものを購入する予算はないという人はもちろん、安定的なインカムゲイン(賃料収入に基づく分配金)を享受しながら、先々では相続対策にも活用したいと考えている人にも有力な選択肢となってくるでしょう。
大西 洋平
ジャーナリスト


