老後を見据えた資産形成。夫婦、力を合わせてコツコツと進めることが重要です。パートナーに秘密に進めていくと、夫婦関係にも影響を及ぼすこともあるようです。
すまん、30年間ずっと秘密にしていた…〈月収27万円〉〈退職金2,200万円〉の60歳定年サラリーマン。妻への感謝を伝える海外旅行のはずが、南国リゾートで懺悔した理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

妻に内緒にしていた「隠し口座」。さらに退職金全額を…

旅行の道中、ずっと嬉しそうな智子さんの姿に、旅行を計画して本当に良かったと心から思ったという徹さん。青い空の下どこまでも続く白い砂浜、そしてエメラルドグリーンの海。開放的な雰囲気のなか、徹さんは長年、智子さんに隠していたある秘密を打ち明ける決意をしたといいます。

 

――実は、智子にずっと隠していたことがあるんだ

 

突然の徹さんの告白に、緊張した面持ちで智子さん。秘密の内容、それは「隠し口座」。実は徹さん、結婚して以来智子さんに内緒で株式投資を中心に運用をしていたといいます。

 

阿部家のお金の管理は「生活費を渡す」スタイル。智子さん自身、家計をやりくりしながら老後を見据えてコツコツと貯金を進めてきました。ただ「それだけでは心配」と、徹さんもこっそりと資産運用をしてきたのです。

 

【年齢別・夫婦のお金の管理】

■お小遣い制

20代:35.6%、30代:36.5%、40代:38.3%、50代:49.2%

■財布を分けている

20代:27.7%、30代:24.6%、40代:28.7%、50代:16.1%

■生活費を渡している

20代:23.3%、30代:22.2%、40代:21.9%、50代:19.7%

■財布が一緒

20代:12.6%、30代:15.1%、40代:10.3%、50代:13.8%

出所:株式会社プラスエイト『結婚後のお金事情に関する調査』

 

なぜ、智子さんに内緒にして資産運用を?

 

――リスクがあるというと、反対されると思った

 

これまで無理な投資はしたことはなく、きちんと資産は増えている。帰国したら隠していた口座の通帳をみせる、と智子さんに伝えると少し安心した様子に。しかし徹さんはさらに驚愕の告白を重ねます。

 

――実は退職金もすべて投資にまわした。実はここ(マレーシア)の不動産を買ったんだ。普段は民泊で貸して、運営はすべてお任せ。毎月家賃収入が入るし、年に10日間はプライベートで使うこともできる。売却したら値上がりした分だけ儲かる。退職金をただ貯金しておくよりもよい話だと思う

 

それを聞いた智子さんの表情は一変しました。夫婦の老後のために、長年、節約を重ね、慎ましい生活を送ってきた智子さんにとって、退職金をすべて投資に回してしまったという事実は大きな衝撃。また長年連れ添った夫に秘密にされていたこと、老後の生活を左右する大きな決断も相談もせずに勝手に行ってしまったこと、すべてが驚きでした。智子さんは声を荒らげ、「なぜ、何も相談してくれなかったのか!」と徹さんを責め続け、徹さんも「本当にすまなかった」と繰り返すばかりだったといいます。

 

これまで大きな夫婦喧嘩はなかっただけに、「これくらい、いわなくても大丈夫」という慢心があったと徹さん。帰国後、また普段の日常に戻っても、どこかぎこちなさが残っているといいます。

 

不動産投資において、妻の反対により不動産投資を断念する「嫁ブロック」はよく知られています。徹さんも反対されると思い、智子さんに内緒に話を進めたという事情もありました。ただ、こじれると大変なことは阿部さん夫婦の例でも明らか。しっかり話し合い、お互いに納得できる条件をすり合わせることが重要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

株式会社プラスエイト『結婚後のお金事情に関する調査』