自分が何歳まで生きるかは誰にもわかりません。そのため、せっかく老後資金を貯めてもお金を使うことに躊躇いを感じる人は少なくないでしょう。究極、亡くなるときに資産ゼロを理想とすると、老後資金はどのように使っていけばよいのでしょうか? 本記事ではAさん夫妻の事例とともに、老後資金の使い方について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
1円たりとも遺さず死にたい…資産1億円・60代上級庶民夫婦「老後資金を貯めすぎた…」後悔も一転、“衝撃の使い方”に30代息子、絶句【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「老後資金=長生きリスクに備える」だけではない?

従来、老後の資産管理では「長生きリスクに備える」ことが最優先とされてきました。実際、厚生労働省のデータによると、日本人の平均寿命は年々伸びており、現在は男性が約81歳、女性が約87歳に達しています。(令和5年簡易生命表)

 

「長生きすることは素晴らしいことだが、老後資金を備えるばかりで、いまを楽しめていないのではないか? もっと若いうちに使っておけばよかったのかな……」

 

A夫婦はそう考えました。しかし「いまさら後悔ばかりしていても仕方がない。いまが一番若いんだし」と、夫婦で話し合い、以下の2つの「お金の使い方」を比較しました。

 

1.いまの生活費を最小限に抑え、老後の不安に備えながら慎重にお金を残していく

2.いまこそ経験に投資し、後悔のない人生を送るために計画的にお金を使いきる

 

Aさんは、「1」の選択肢では、結局お金を使わないまま人生を終える可能性が高いことに気づきました。一方、「2」の考え方を取り入れれば、「本当にやりたいこと」にお金を使いながら、人生を最大限楽しむことができます。Bさんも、「いまのうちに夫婦で海外旅行に行ったり、新しいことに挑戦したりするのはいいかもしれないわね」と賛同しました。

 

こうして、A夫婦は「1億円をただ蓄えるのではなく、自分たちが楽しみながら計画的に使いきる」という方向に舵を切ったのです。

「1円も遺さずに死にたい」…思い切って決めた計画

A夫婦は具体的に60代・70代・80代以降でどうお金を使うかを決めました。

 

60代(体力のあるいまこそ経験に投資)

●長年憧れていた世界一周旅行を実現する

●趣味のゴルフやカメラを本格的に始める

 

70代(生活の質を維持しながら、ゆとりを持って過ごす)

●コンパクトな駅近マンションに住み替えて利便性を向上

●健康維持のためのトレーニング費用を確保

●子どもたちに生前贈与し、早い段階で資産を活かしてもらう

 

80代以降(介護や終活を見据えた資産活用)

●希望する介護サービス、老人ホームの資金を確保

●自分たちの葬儀費用を確保し、家族に負担をかけない