サラリーマンであれば「定年」がひとつの区切りになり、6割ほどの企業が60歳を定年としています。一方で、早期退職制度を利用して、定年を待たずに会社を去るケースも。早期退職の場合、多くが退職金を優遇して受け取ることができるので、それを利用して新たな挑戦をする人もいるようです。
「月収65万円」「退職金2,600万円」大手メーカーを早期退職した55歳サラリーマン夫、想像をはるかに超える転職先に54歳妻、衝撃「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

収入が減っても、不安定でも…サラリーマンから農家になったワケ

誠さんが始めたのは、ビニールハウスを使った果樹栽培。

 

――子どもが小さいころ、よく果物狩りに連れて行ったんですよ。家族が美味しそうに食べるんですよ。それが今回の挑戦の原点といえるかもしれないですね

 

農業を始めるには、まず農地を確保する必要があります。日本では農地法という法律で、農地はみだりに売買したり、転用したりすることが制限されています。農地を取得するには農業委員会の許可が必要ですが、農地を農地を借りるという方法もあります。誠さんの場合、まずは農地を借りて農業をスタートさせることになりました。

 

問題は費用。農業を始めるには、種苗代、肥料代、農機具代など、さまざまな費用がかかります。また農業経営を安定させるためには、しっかりとした資金計画を立てることが重要です。一方で国や自治体の補助金制度などを活用することもできます。ビニールハウスで果樹栽培をスタートさせようという誠さんの場合、50坪の敷地に連棟式ビニールハウス、暖房や給水などの設備、農機具さらに苗などを含めて、初期費用が600万円ほど(年間借地料込み)。1年の売上は200万円ほどを見込んでいます。軌道にのったら、隣接する農地も借りて、規模を拡大させる計画です。

 

果樹栽培者は全国に145万2,780人(平均年齢47.2歳)。また1ヵ月の労働時間は171時間、年収は374万4,000円です。会社員の平均は506万円ほどなので、それと比べると収入が減ること、不安定になることは避けられそうもありません。

 

それでも農業に挑戦するのはなぜなのか?

 

――サラリーマンは、どうしても会社の歯車のひとつ、という感覚がある。もちろんやりがいはありましたが、もっと自分の手で何かを作り出す喜びを味わいたい、という気持ちが強くなったんです

 

「大変なことも多いですが、毎日が充実しています」という誠さん。「私も巻き込まれて、本当に大変です」と苦笑いしつつ、楽しそうな洋子さん。55歳からの新たな挑戦は始まったばかりです。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年 就労条件総合調査』

厚生労働省『jobtag』