
収入が減っても、不安定でも…サラリーマンから農家になったワケ
誠さんが始めたのは、ビニールハウスを使った果樹栽培。
――子どもが小さいころ、よく果物狩りに連れて行ったんですよ。家族が美味しそうに食べるんですよ。それが今回の挑戦の原点といえるかもしれないですね
農業を始めるには、まず農地を確保する必要があります。日本では農地法という法律で、農地はみだりに売買したり、転用したりすることが制限されています。農地を取得するには農業委員会の許可が必要ですが、農地を農地を借りるという方法もあります。誠さんの場合、まずは農地を借りて農業をスタートさせることになりました。
問題は費用。農業を始めるには、種苗代、肥料代、農機具代など、さまざまな費用がかかります。また農業経営を安定させるためには、しっかりとした資金計画を立てることが重要です。一方で国や自治体の補助金制度などを活用することもできます。ビニールハウスで果樹栽培をスタートさせようという誠さんの場合、50坪の敷地に連棟式ビニールハウス、暖房や給水などの設備、農機具さらに苗などを含めて、初期費用が600万円ほど(年間借地料込み)。1年の売上は200万円ほどを見込んでいます。軌道にのったら、隣接する農地も借りて、規模を拡大させる計画です。
果樹栽培者は全国に145万2,780人(平均年齢47.2歳)。また1ヵ月の労働時間は171時間、年収は374万4,000円です。会社員の平均は506万円ほどなので、それと比べると収入が減ること、不安定になることは避けられそうもありません。
それでも農業に挑戦するのはなぜなのか?
――サラリーマンは、どうしても会社の歯車のひとつ、という感覚がある。もちろんやりがいはありましたが、もっと自分の手で何かを作り出す喜びを味わいたい、という気持ちが強くなったんです
「大変なことも多いですが、毎日が充実しています」という誠さん。「私も巻き込まれて、本当に大変です」と苦笑いしつつ、楽しそうな洋子さん。55歳からの新たな挑戦は始まったばかりです。
[参考資料]