
息子夫婦の家からも近い老人ホームに入居「ここなら頻繁に遊びに行ける」といっていたが
公益財団法人日本財団が行った調査によると、最期を迎えるのに一番望ましい場所として最も支持を集めたのが「自宅」で58.8%。「医療施設」が33.9%で続き、「介護施設」は4.1%でした。また絶対に避けたい場所としては、トップは「子の家」で42.1%。続いて「介護施設」が34.4%と続き、「医療施設」は10.5%、「自宅」は8.9%でした。
最期を迎えるのに望ましい場所として「自宅」が選ばれるのは、「自分らしくいられる、住み慣れた落ち着ける場所」として選ばれ、「医療施設」や「介護施設」は「プロに任せられる安心」という理由に加えて「家族に負担や迷惑をかけたくないという意識」から選ばれているといいます。しかし実際の死亡場所のトップは「病院等」が69.8%、「自宅」が17.4%、「老人ホーム」が11.0%。「最期は自宅で」と望みながらも、その願いを叶えることは難しいのが現状です。
話し合いの結果、美智子さんは老人ホームに入居することになりました。美智子さんが月々受け取っている年金は亡くなった夫の遺族年金合わせて16万円。手取りにすると14万円ほどです。預貯金などを考慮して、月額20万円程度で入居できる介護付き有料老人ホームを検討しました。そして費用的にも合致したのが、現在入居している老人ホーム。大介さん夫婦の家からも近く、「ここなら頻繁に遊びに行ける」といってくれたのが決め手となりました。
入居から3年。老人ホームでの生活は悪くはありません。介護のプロはもちろんのこと、万一の際には頼りになる医療スタッフも常勤しています。料理の美味しさに定評のある施設なので、毎日、食事の時間が楽しみ。四季折々の姿をみせてくれる庭、それを望むダイニングで過ごす時間は特別です。ただ大介さん夫婦が面会に来ることはほとんどなく、3~4ヵ月に一度。入居の決め手となった「ここなら頻繁に遊びに行ける」という言葉は、今や美智子さんを納得させるためだけのものだったといわざるを得ません。口車に乗せられたことに今なお腹が立ち、絶望しかないといいます。
――私、ここでひとりで死んでいくしかないのね
高齢となった親のひとり暮らし。子どもとしては心配でたまらないものです。だからこそ、老人ホームに入居してくれたらお互いに安心、というのはあるでしょう。しかし老人ホームに入居したらそれで終わりというわけではありません。親子のコミュニケーションがあってこそ、老人ホームでの暮らしは充実すると心得ておきたいものです。
[参考資料]