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ある定年夫婦が直面した「孫」を介した支出の増大
大手メーカーで働いていた、林健一さん(仮名・65歳)。再雇用を経て、65歳で完全リタイアを迎えました。退職金を含む貯蓄額は5,000万円、同い年の妻・和子さん(仮名・65歳)の分と合わせた年金は月額34万円です。
経済的な懸念はなく、穏やかなセカンドライフが始まるはずでした。しかし、その平穏は定年直前に近隣に転居してきた長女(32歳)一家によって終わりを迎えます。長女夫婦は共働きですが、保育園の送迎や夕食の準備を和子さんに依頼するようになりました。当初、林さん夫妻はこれを快諾し、孫(6歳・4歳)との交流を目的として、週末の外食費やレジャー費も全額負担していました。
「最初は月に5万円程度の支出でした。しかし、長女から『住宅ローンの支払いが厳しい』『子どもの教育費を貯めたい』と相談を受けるうちに、習い事の月謝や季節ごとの衣類代も私たちが支払う形が定着してしまったんです」
健一さんの家計管理表によると、孫に関連する支出は半年後には月平均10万円を超え、現在は15万円に達しています。年金月額34万円のうち、夫婦の生活費を除くと余裕はわずかですが、足りないときは5,000万円の貯蓄を切り崩す状態が続いています。
身体的な負担も深刻でした。和子さんは週5日、朝8時から夜20時まで孫の世話と長女宅の家事に奔走。これにより、以前から患っていた膝の痛みが悪化し、通院回数が増加しました。健一さんが長女に対し「少し頻度を減らしてもいいか」と申し出たところ、長女は「お父さんたちは暇だし、お金もあるからいいじゃない。孫の将来を考えないの?」と反論してきたといいます。
「孫を話に出されると、何も言えない……」
最近は電話が鳴るたびに「次はどんな要求だろう」と身構えてしまうそうです。孫は目に入れても痛くない存在であることは間違いありません。しかし、「お金を払うのは、じぃじとばぁば」という構図が定着してしまった今、孫に会えばすべての支払いを当たり前のように林さん夫婦が行うことになります。5,000万円以上あった貯蓄は、この1年だけで250万円以上も減少してしまいました。
健一さんは、長女一家との接触を避けたいと考え始めていますが、支援を拒否したら孫との関係が断絶されるかもしれない――そんな思いから、断ることができなくなっています。
