地方で働く親と、都会で就職した子ども。昨今の物価高のなかで、子どもが遠方に住む親を頼ることもあるかもしれません。しかし、親側にも余裕がない場合、子どもは限界まで我慢をしているケースもあって……。本記事では、Aさんの事例とともに、将来を担う若者抱える経済的不安について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が解説する。
東北在住・手取り月25万円の51歳父、東京で就職した手取り月25万円の23歳息子から「ごめんなさい…」と緊急連絡。電話で告げられた驚愕の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

若者が経済的理由で夢を諦める社会

3人に1人が奨学金を利用する時代

Aさんの事例は決して珍しいものではなく、JASSOの調査によると、現在、大学生の約3人に1人が奨学金を利用している。背景には、物価や学費の高騰に対して、過去30年間の平均年収がほぼ横ばいであるという現実がある。この差を奨学金制度が埋めているのが現状だ。近年の物価高は、学生の生活にも大きな影響をおよぼしている。全国大学生協連が昨年秋に実施した「第60回学生生活実態調査」によると、大学学部生の消費支出は多くの項目で増加する一方、貯金は減少傾向にあることが明らかになった。加えて物価の上昇や奨学金返済への不安から、「生活費やお金」に関する悩みを抱える学生が最多となっている。

 

また「借金になる」というイメージから、奨学金の利用を敬遠し、進学を諦める若者も少なくない。経済的な理由で学びや挑戦を諦めざるを得ない若者がいることは、社会にとって大きな損失である。

 

企業による代理返還制度の必要性

若者が安心して奨学金を借りられる環境を整えるためには、返済の支援が必要だ。その一つの解決策として、企業による奨学金代理返還制度が挙げられる。企業が社員の奨学金を代理返還することで、社員の経済的負担が軽減され、仕事へのモチベーション向上や人材定着につながる。また、企業イメージの向上や優秀な人材の獲得にも貢献するだろう。

 

奨学金代理返還制度は、若者の未来を支えるだけではなく、企業の発展、さらには日本全体の成長を促進する有効な手段となる。
 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者