
奨学金がなければ得られなかった学び
努力の甲斐あって志望校に合格したものの、学力基準を満たせず給付型奨学金の対象にはならなかった。Aさんは、高校までのようにうまくはいかないと感じた。そのため、日本学生支援機構(以下、JASSO)の貸与型奨学金月8万円を借りることに。大学では、関心のあった経営学やマネジメント、そして、それまで触れる機会のなかったマーケティングやグローバルな経営環境について学び、充実した日々を送った。
Aさんは自身が利用した奨学金について、「学業はもちろんのこと、それまでスポーツ一筋だった自分にとって、多様なバックグラウンドを持つ友人と出会い、価値観を広げる貴重な時間となりました。大学生活は、自分の人生において非常に重要な経験でした。奨学金を利用しなければ、こうした学びや経験を得ることはできなかったので、心から感謝しています」と話す。
月1万7,000円の返済が圧迫する新社会人の家計
大学卒業後、Aさんは将来的な独立を見据えて東京の経営コンサルティング会社に就職した。現在、毎月約1万7,000円の奨学金を返済している。手取り収入は約25万円と、地元の平均賃金と比較すれば高い水準にあるものの、全国的な賃上げの流れを踏まえると、新卒社員の初任給と大きな差はない。
「毎月1万7,000円を返済していますが、完済まであと10年以上かかる見込みです。中小企業の経営者との交流、資格取得のための学習費や書籍代、さらには都内外での研修にかかる参加費や交通費など、自己研鑽として支払う費用が多いうえに、独立のための貯金で常に経済的に厳しい状況です。最近は物価高の影響で、野菜やお米の購入も難しくなってきました。東京は本当に物価が高い。夜のスーパーで値引きされた惣菜パンをまとめ買いして日々やりくりしています。どうしても苦しい月は父に謝りながら電話をして食料を送ってもらうことも……。奨学金の返済がなければ、もう少し余裕を持てたかもしれません」Aさんの現状は想像以上に厳しい。