(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資を進める高所得サラリーマンは多いものの、不動産会社から「税金対策ができているから損失が出ていても大丈夫ですよ」といわれて納得しているケースは多いもの。しかし利益を目指さない投資は考えもの。高所得サラリーマンが目指すべき不動産投資を考えてみましょう。

コンサル男性「節税目的の不動産投資」を始めたが…

[事例]Tさん:41歳/年収3,000万円

・大手コンサル会社勤務

・独身

 

Tさんは大手コンサル会社に勤務する41歳の男性で、年収は3,000万円と高年収です。それだけを聞くと周囲にはやっかむ人がいるほどですが、Tさんの目下の不満は「手取り所得の低さ」です。Tさんは配偶者も子供もいないため控除される部分が少なく、手取りは年1,700万円ほど。もちろん平均的なサラリーマンよりもはるかに多い所得ですが、毎年1,300万円が税金と社会保険料で消えてしまうことに非常に不満を持っています。

 

そこで始めたのが節税目的の不動産投資です。2年前に上司から不動産投資で節税ができているという話を聞き、とても興味をもったTさんは、あまり調べることもなく上司から紹介された業者から区分マンションを購入しました。

 

サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組みは、簡単にいえば次の通りです。

 

  • 不動産投資での毎年の赤字を本業の給与所得と通算させて課税所得を下げる
  • 赤字を出す秘訣は「減価償却費の計上」(現金は出ていかないが経費にできる)

 

つまり減価償却という経費をつかって赤字を作り、所得税と住民税を下げるということです。不動産投資による所得は不動産所得と呼び、赤字が出たら給与所得と通算する「損益通算」という制度が使えます。これによって課税所得を低く計算することができ、結果的に所得税と住民税を抑えることが可能になるという理屈です。

 

Tさんが2年前に購入した区分マンションも、初年度から「順調に」赤字となり確かに所得税の還付を多く受けることができました。しかし不動産投資の収支を計算してみると、家賃収入があってもローン返済と修繕積立金の支払いで利益はマイナスです。減価償却費の計上で申告上はさらに大きな赤字になります。これによって本業の節税になっていますが、商売としては破綻している状態でしょう。

 

本当にこのままでいいのかTさんは不安になっていたところ、2年目の年の半ばに入居者が退去してしまいました。半年間の家賃収入はゼロ。減価償却費を除いても大赤字を出しました。

 

マンションを購入した不動産業者に相談したところ、「赤字は出ていても節税になっているので大丈夫ですよ」と余裕そうにいわれるだけなのですが、Tさんは釈然としません。節税といっても、節税額は不動産投資で被った赤字分を補填するほどではありません。確実にTさんからキャッシュが流出し続けています。

 

不動産業者は「マンション価格は高騰しているので、5年目以降に売却することで大きな利益が出ます。売却時の税引き後利益とこれまでの節税分を合わせたらプラスになるはずですので大丈夫です」というのですが……それを鵜呑みにしてもいいものかTさんは悩んでいます。

 

そこでFPに相談してみたところ、自分の投資のリスクについて初めて知ることになりました。

 

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