(※写真はイメージです/PIXTA)

人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは神奈川県厚木市に位置する「愛甲石田」。

「本厚木」の隣駅「愛甲石田」…246号線沿いが生活の中心

小田急小田原線「愛甲石田」駅は、神奈川県厚木市愛甲にあり、近隣の「愛甲」と「石田」という2つの地名を組み合わせて名付けられました。厚木市と伊勢原市の市境にあり、駅自体は厚木市にありますが、ホーム西側は伊勢原市に位置しています。

 

小田急小田原線の主要駅である「本厚木」駅の隣で、2023年度の1日平均乗降人員は4万5,393人。前年から11.3%の増加を記録しました。ちなみに1980年代後半から2020年にかけて乗降客数は約2倍に増加。これは周辺の人口増加や周辺の企業立地が起因です。 「愛甲石田」から「新宿」は快速急行で50分強、「横浜」へは途中「海老名」から相鉄線に乗り換えて40~50分でアクセスできます。駅の北口側は東京都~神奈川県~静岡県を貫く交通の大動脈である国道246号に接しているため、ロードサイド型の店舗や飲食店が多くあります。一方、南口側は閑静な住宅街が広がっています。駅周辺には目立った商業の集積はありませんが、国道246号沿いの駅徒歩圏内にスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどが揃うため、生活の中心は幹線道路沿いとなるでしょう。

 

また隣駅の「本厚木」やさらに新宿よりの「海老名」周辺には大型商業施設が点在。用途で駅を使い分けることもできます。

 

人口が増える「愛甲石田」周辺だが将来的には…

相模川から望む厚木IC
相模川から望む厚木IC

 

「愛甲石田」駅のある厚木市の人口は、2020年国勢調査では22万3,075人で、5年前調査から2,009人の減少、世帯数は10万0,360世帯で4,536世帯の増加を記録しています。平均年齢は46.29歳で、15歳未満は11.6%、労働生産人口である15~64歳は61.1%、65歳以上が25.7%。神奈川県の平均はそれぞれ11.7%、60.9%、24.9%。若干、若年層が少なく、高齢化が進む地域といえます。

 

また駅西側に広がる伊勢原市についてもみていきましょう。2020年国勢調査では10万1,780人で、5年前調査から266人の増加、世帯数は4万5,361世帯で2,273世帯の増加を記録しています。平均年齢は46.5歳で、15歳未満は11.7%、労働生産人口である15~64歳は61.7%、65歳以上が26.6%。厚木市以上に高齢化が進む地域です。 では「愛甲石田」駅周辺ではどうでしょうか。【図表1】は2015年~2020年の人口増加率つれて減少を表しています。それによると、「本厚木」周辺では人口減となっている一方で、「愛甲石田」、特に国道の走る駅北側は人口増のエリアが目立つことがわかります。

 

【図表1】「愛甲石田」駅周辺人口増加率メッシュマップ 出所: 総務省『国勢調査に関する地域メッシュ統計』
【図表1】「愛甲石田」駅周辺人口増加率メッシュマップ 出所: 総務省『国勢調査に関する地域メッシュ統計』

 

人口増の要因となっているのが、交通の結節点という地域性。前述のとおり、「愛甲石田」駅の北側には国道246号線が通るほか、東名高速道路厚木ICも近接。交通の要所として、物流センターや工場、オフィスが集中しています。特にEC市場の拡大に伴い、物流拠点としての価値が上昇し、周辺人口も増加傾向にあると考えられます。

 

一方で将来を見据えると、人口減が予想されています。都心から40キロ以上離れている地域は、どこも人口減、高齢化が加速。交通の要所として存在感を発揮する「愛甲石田」周辺でさえも、土地のポテンシャルを人口減のスピードが上回ると予想されているのです(図表2)。

 

【図表2】「愛甲石田」駅周辺将来人口メッシュ 出所:国土交通省『メッシュ別将来人口推計(平成30年推計)』
【図表2】「愛甲石田」駅周辺将来人口メッシュ 出所:国土交通省『メッシュ別将来人口推計(平成30年推計)』

 

それでも「愛甲石田」を注目すべき理由

人口減少が加速度的に進んでいくこれからのことを考えると、「愛甲石田」周辺での不動産投資はやめておいたほうが……と思いがちですが、一方で注目すべきニュースも。近年、「住みたい街」として存在感を発揮しているのが「本厚木」です。一時期、中心市街地から次々と大型商業施設が撤退し話題になっていた「本厚木」ですが、コロナ禍で郊外が注目されるなか、利便性を備えたちょうどいい郊外として人気上昇。都心まで1時間圏内という交通利便性に加え、買い物利便性も申し分なし。少し駅から離れたらのどかな自然にも触れることができる……抜群の子育て環境が注目を集めているのです。

 

その人気は周辺駅にも波及。特に「愛甲石田」は「本厚木」の隣駅であり、停車駅の少ない快速急行も停車。「本厚木」よりも静かで落ち着いた雰囲気を望む人たちの受け皿となっています。なんといっても注目は家賃水準。大手住宅検索ポータルサイトの平均値をとると、「本厚木」周辺は、1LDKで11万円台、2LDKで15万円台、3LDKで17万円。一方で「愛甲石田」周辺は物件数が少ないながらも、1LDK~3LDKは8万~9万円台と、圧倒的にリーズナブル。利便性を兼ね備えた「愛甲石田」周辺が、賃貸経営において競争力の高い地域であることがわかるでしょう。

 

もちろん、今後人口減が予想されるなかで、賃貸ニーズを確実に取り込むためには、物件の管理力が必須であることはいうまでもありません。