「定年後は夫婦でゆっくり旅行でも……」そう考えていたのに、突然の離婚宣告。昨今、定年を迎えるタイミングでの熟年離婚が増えています。3月は離婚が多い時期とされ、長年連れ添った夫婦が「この先の人生」を見つめ直す節目になっているのかもしれません。本記事では、MさんとFさんの事例から、離婚がおよぼすライフプランへの影響についてFP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
「退職金2,500万円」「最高年収1,200万円」59歳夫、奮発して定年祝いの高級旅館・宿泊計画中にまさかの事態…妻は秒速引っ越し、家はがらんどう。息子が告げる「衝撃の追い打ち」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

あまりに手際のよい妻

その後、妻はすぐに賃貸マンションへ引っ越し、別居後は弁護士を通じて話し合うことになったそうです。妻の対応の手際のよさに、Mさんは「なぜこんなことに……」と戸惑うばかりでした。妻は随分前から準備を進めており、息子たちはMさんより先にその話を聞いていたこともあとからわかり、愕然としました。妻も息子たちもいない我が家はやたらと広く感じます。

 

Mさんのように、仕事が忙しく休日はゴルフなどに出掛け、十分な収入があることで家族に不自由はさせていないと思っていたのに、突然離婚を切り出されるケースは少なくないようです。一方で、時間をかけて離婚の準備を進める人もいます。特に、夫の定年退職に合わせて計画的に離婚を考える女性は少なくありません。

モラハラ?友人の指摘で考え始めた計画

離婚までの期間は、一般的に6ヵ月~1年といわれていますが、「未成年の子がいるか」そして、女性の場合は「経済力」も大きく影響をおよぼします。

 

Fさん:44歳 契約社員 年収280万円

夫:49歳 会社員 年収950万円

長女:14歳

次女:11歳 

 

Fさんは、かつては仕事を持っていましたが、出産と夫の転勤が重なったことで退職。以来、家事と育児のほとんどを担ってきました。長女の小学校入学を機にパートからスタートし、いまではフルタイムで働きながら正社員になることを目指しています。

 

夫は「俺のほうが稼いでいるんだから」と家事や育児の負担をFさんに押し付けていることや、義母とそりが合わないことも悩みの種です。夫の言動について友達に相談すると「それってモラハラじゃないの?」といわれます。長年のモヤモヤが腑に落ちたFさんは、この生活を続けることに疑問を抱くようになりました。

 

すぐに離婚することも考えましたが、現在の収入では経済的な不安が大きいことから、夫の定年退職まで待つ選択肢も検討しています。そこで、離婚後に困らないために、

 

1.収入の高い夫の定年退職まで待って離婚する場合

2.経済的に自立できるキャリアプランを構築し、できるだけ早期に離婚する場合

 

の2つの選択肢を比較しながら、準備を進めることにしました。特に、シングルになったときに直面する子どもの教育費や老後の年金問題について、Fさんが困らないように、

 

・教育費に関する支援制度

 就学援助、奨学金制度など

・ひとり親家庭への相談窓口

 各自治体で、手続きに関することだけでなくお金や仕事、住まいに関するさまざまな助成制度について案内

・年金受給見込み額

 「ねんきんネット」で照会※2

 

などを確認し慎重に考えています。