昨年、生活保護の申請が過去12年で最高を記録しました。困窮する人のなかでも多いのが高齢者です。「年金だけでは生きていけない」。それが高齢者の現実です。しかし困窮しながらも「生活保護だけは……」と申請に二の足を踏む高齢者も。それも現実です。
もう生きていても辛いだけ…〈年金月5万5,000円〉〈家賃8,000円〉の市営団地に住む82歳女性、異常な物価高騰に〈夫の遺産〉も底を尽き、絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護の不正受給…数は少ないがイメージダウンに

本当は生活保護を申請したくなかったという高橋さん。世間での生活保護の風当たりは強く、そのため「生活保護だけは使いたくない」「周囲の人や家族に(生活保護を受けていることを)知られたくない」という人は多いもの。生活保護に対してネガティブな印象を受ける人が多いのは、不正受給の存在があります。

 

厚生労働省の資料によると、2020年、不正受給の件数は3万2,090件。1件当たりの金額は39万4,000円でした。件数ベースでみると2%、金額ベースでは0.4%と程度とされています。不正の内訳をみていくと、「稼働収入の無申告」が最も多く1万5,878件。続いて「各種年金等の無申告」が5,678件、「稼働収入の過小申告」が3,551件と続きます。

 

また昨今、SNSの普及により、「生活保護なのにパチンコをしている」などという画像が広く拡散。「不正受給なのでは?」という疑念により、生活保護、そのものへの風当たりが強くなっています。

 

そのようななか高橋さんは「別に世間の目はどうでもいい」といい、それよりも「生活保護を受けるようになったら、もう抜け出せないことが嫌だった」と話します。

 

――生活保護を受けて生活を立て直して、そして生活保護から卒業する……今後、生活保護を頼らずに生きるためには、年金が増えないと無理。でもそんな未来、ないじゃない。生活を立て直すことなんてできずに、死んでいく……もう生きていても辛いだけよ

 

生活保護は国民の権利として認められているもので、必要であれば誰もが使える制度。ただ社会全体が困窮しているなか、生活保護を受けている人のほうがよい暮らしをしている……そんな逆転現象が解消されない限り、肩身の狭い思いをしながら保護を受ける現状は変えられそうもありません。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和6年度被保護者調査』

厚生労働省『社会保障審議会生活困窮者自立支援 及び生活保護部会(14回)資料5』