(※写真はイメージです/PIXTA)
600万円の遺産を残し、亡くなった夫
東京から電車で1時間ほどの街に住む、高橋弘子さん(仮名・82歳)。住まいは市営団地、家賃は8,000円強と格安。それでも生活は苦しく、生活保護を受けているといいます。
――モノの値段があがっているでしょ。年金だけではとても生きていけないもの
高橋さんが受け取る年金は月5万5,000円ほど。一方で高橋さんが住む街において、82歳高齢者の最低生活費は6万3,000円ほど。年金との差額と家賃分、合わせて月2万円弱をもらっているといいます。
厚生労働省『令和6年度被保護者調査』によると、昨年1年間の生活保護申請は25万5,897件。前年818人、割合にして0.3%増え、この12年間で最も多くなりました。単身者世帯の増加とともに、昨今の物価高の影響が大きいと考えられます。
昨年12月時点で生活保護を受けている人は200万7,364人、165万2,199世帯。世帯種別でみると、最も多いのが高齢者世帯で90万2,810世帯。生活保護を受ける半数以上が高齢者です。ちなみにほかは障害者世帯が22万8,846世帯、傷病者世帯が18万6,548世帯、母子世帯が6万2,510世帯。いかに困窮している高齢者が多いことがわかります。
生活保護は原則、一生受けるものではありません。困窮している人たちを助けるとともに、そのような人たちの生活再建をバックアップするものです。前述のとおり昨年は過去12年間で最多の申請数を記録しましたが、一方で22万8,594人世帯が保護廃止となっています。もちろん廃止の理由は経済的自立や傷病の完治だけでなく、受給者の失踪や死亡なども含みます。
――私の場合、死ぬまで生活保護を受けないと生きていけないわね
10年前に夫を亡くした高橋さん。600万円ほどの遺産がありましたが、この10年で徐々に取り崩し、そしてゼロになってしまったといいます。
――十分なお金ではなかったけれど、でも夫が残してくれたお金と年金で、なんとか死ぬまでやっていけると思っていた。でも無理でした。やっぱり、最近の物価高は異常ですよ
遺産が底をついたときの絶望感……今も忘れないといいます。