高齢化に伴い有料老人ホームが増加し、厚生労働省の調査でも在所者数は59万人を超えています。施設へのニーズが高まる一方、入居後に想定外の費用に頭を抱えるケースが少なくありません。ある親子の事例から、知っておくべき「老人ホーム費用のリアル」と見落としがちな落とし穴を見ていきましょう。
年金月15万円の78歳母だったが…長男「こんなに高いなんて聞いてない!」と絶叫する「驚愕の老人ホーム請求額」

老人ホーム費用「月20万円なら払える」

「ここなら最後まで暮らせますよ」

 

担当者の説明を聞いたとき、佐藤和子さん(78歳・仮名)は胸をなで下ろしました。夫を6年前に亡くし、神奈川県内の戸建てで一人暮らしを続けていました。しかし転倒による骨折をきっかけに歩行が不安定になり、長男から施設入居を勧められます。

 

厚生労働省『社会福祉施設等調査』によると、2024年、有料老人ホーム(サ高住は含まない)は全国に1万8,460施設。前年から627施設も増えました。定員は71万2,728人で在所者数は59万1,173人。前年から3万人の増加となりました。高齢化に伴い、その数はさらに増えていくといわれています。

 

査定の結果、自宅は1,800万円で売却できることがわかりました。住宅ローンは完済済みだったため、売却代金と預貯金を合わせると2,500万円ほどになる予定です。

 

年金収入は月15万円、手取りで月13万円ほど。入居を検討していた介護付き有料老人ホームの月額利用料は20万円。以前、親がホームに入っていたという知人に尋ねたところ、月額利用料のほか、月1万~2万円程度の費用がかかるとのことでした。仮に月9万円の取り崩しがあったとして、年間で108万円――。

 

「お金の心配はなさそうだ」

 

家族はそう話し、契約書に署名しました。ただ、契約時に受け取った重要事項説明書は50ページ以上ありました。説明は約2時間。内容を理解したつもりでも、「月額利用料以外に実費負担があります」という一文の重みまでは想像できませんでした。

 

最初の請求書を見て、長男の大輔さん(52歳・仮名)は首をかしげます。請求額は22万9,400円。月額利用料20万円より約3万円高くなっています。内訳を見ると、おむつ代8,600円、洗濯代4,200円、理美容代2,800円、レクリエーション参加費1,500円、医療材料費などが並んでいました。

 

「こんなものなのかな」

 

そう思って支払いました。ところが翌月は24万4,000円。その翌月は25万円を超えます。原因は通院でした。整形外科への付き添いが1時間2,200円。待ち時間も料金に含まめます。送迎費は片道1,100円。月2回の通院だけで1万円近くになりました。さらに医師からたんぱく質制限食を勧められると、特別食加算として1日350円が加わります。1ヵ月では約1万円です。

 

夏場は居室の電気代が想定より高く、冬には加湿器のレンタル費用も発生しました。半年後には毎月の支出が平均26万円まで増えていました。年金手取り額との差額は月13万円ほど。当初のシミュレーションより、年間で50万円近くの差が生じることになりました。

 

「こんなに高いなんて聞いてない!」

 

和子さんは請求書を見ながら小さくつぶやきました。長男は契約書を読み返します。確かに、おむつ代も通院付き添いも、特別食も「実費」と書かれていました。書かれていた以上、「説明がなかった」とは言えません。しかし、毎月いくらになるのかまでは誰も具体的に説明していなかったのです。