賃上げの効果はじわりと広がり、昨年の冬には「賞与増額!」で歓喜した人も多いのでは。一方で、「ボーナス増額は嬉しいけれど……」と複雑な表情をみせたサラリーマンもいたとか。その背景には、複雑な日本の年金制度がありました。
今年は儲かったからボーナスは弾みます!〈年金22万円・66歳サラリーマン〉が浮かれ気分の社長に舌打ち、〈年金停止の通知〉に「やっていられません!」 写真はイメージです/PIXTA

「年金+給与」で老後の生活がさらに安定

営業部門で総務、そしてアドバイザー的なポジションにいるという松井隆さん(仮名・66歳)。長年勤めた会社を60歳で定年になったのち、契約社員として再雇用され今に至ります。

 

――10時から18時の勤務で残業はほぼなし。現役でバリバリ働くみんなには悪いけど、気軽なもんですよ

 

65歳を迎え、年金を受け取り始める同僚も多く、松井さん自身も同じように選択したといいます。

 

――給与がもらえるうちは年金は受け取らないと、繰下げを選択する人もいましたが、いつ、何があるかわからない。「年金をもらっておけばよかった」ということにならないよう、65歳から受け取るのが正解だと思いました

 

老齢年金は原則65歳から受給開始。しかし60~75歳の希望するタイミングで受給を始めることができます。そのうち、66~75歳と、本来の受給開始よりも遅れて年金を受け取る制度を「年金の繰下げ受給」といい、1ヵ月受給開始を遅らせるごとに0.7%受取額は増額。最大84%も増額となる計算です

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給権者のうち繰下げ受給を選択している人は44万5,178人で全体の1.6%。年金に対するスタンスは人それぞれですが、受取月額を増やしたいという人を中心に増加傾向にあります。

 

松井さんが受け取る年金額は厚生年金が18.7万円。基礎年金と合わせると22.4万円ほど。そこに月30万円ほどの給与が加算されます。

 

――年金と給与を合わせると、手取りは月43万円ほどになります。現役時代と同様とはいきませんが、老後の不安は幾分和らぎます。できれば70歳くらいまでは元気に働きたいですね