離れて暮らす高齢の親。さらにひとり暮らしだと、不安や心配は大きくなるでしょう。「一緒に住まない?」と同居を呼びかけることもあるでしょうが、うまくいくとは限らないようです。
75歳父の死で〈年金15万円・69歳の母〉が「あなたのところに行く」と同居宣言…〈月収45万円・46歳の長男〉、妻との板挟みで「もうツライ、もう逃げたい。」 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護が必要になったら施設に入るし…母(義母)の言葉が決め手だったが

高齢の母(義母)との同居に消極的だった野口さん夫婦。しかし金銭面のメリットに心が揺れたといいます。洋子さんの年金は月15万円程度。また家を売却できたら1,000万円くらいになるとか。もし同居という話になったら生活費の一部は渡すし、税金がかからない程度にローンの支払いも援助するといいます。

 

月収45万円ほどだという直樹さん。パートで働く絵美さんの給与を合わせると世帯月収は月60万円程度になります。家族4人が暮らすには十分すぎる収入ではあるものの、これから子どもたちの教育費が増えていくタイミング。同居には大きなメリットがあります。

 

しかしデメリットとして考えられるのが、今後介護が必要になったときのこと。介護が心身ともに大きな負担になることは目に見えています。しかし洋子さんは「介護が必要になったときには施設に入ろうと思うの。プロに任せたほうが安心でしょ」といいます。これで同居に対するハードルがひとつクリアになりました。あとは「親との間で生まれるストレス」がどれほどか、ということですが……。

 

【親と同居するメリット・上位5】

1位「金銭面で楽になる」…49.4%

2位「家事が分担できる」…26.8%

3位「親の見守り・世話ができる」…19.4%

4位「育児を助けてもらえる」…14.2%

5位「安心感がある」…7.0%

出所:株式会社AlbaLink『親との同居に関する意識調査』

 

――腹を括るしかないと思って、母(義母)との同居を決めました

 

洋子さんの部屋は玄関横にある客間。リビングとは離れ、家族4人それぞれの部屋は2階。うまい具合に生活スペースを分けることができるかも……最終的に同居を決断した理由となりました。しかし母(義母)との同居が簡単にいくのであれば、世の中、嫁姑問題などといわれるはずがありません。

 

同居が始まって1ヵ月ほど経ったころ、穏やかだった関係に少しずつ亀裂が入っていきました。洋子さんは早起きで、朝5時には起床し家事を始めます。生活スタイルの違いは、特に夜型の絵美さんはストレスを感じるようになりました。また小学生の孫たちに対する洋子さんの接し方が、絵美さんの育児方針と合いません。洋子さんは甘やかし過ぎると感じる一方、絵美さんは子どもの自主性を重んじたいと考えていました。さらに洋子さんは、孫たちとの時間を大切にしたいという思いから、頻繁に2階の孫の部屋に上がるようになりました。これが、家族のプライバシーを侵害していると絵美さんは感じるようになり、ストレスが溜まっていきました。

 

ストレスでイライラしている妻を前に、「胃がキリキリする」という直樹さん。同僚と飲みに行くたびに「もうツライ、もう逃げたい」と愚痴をこぼすようになったといいます。

 

――高齢の親と遠く離れて暮らすのは不安だけど、近すぎるのも大問題。適度な距離がどれほど大切かを思い知りました。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL『高齢期の住み替え調査』

株式会社AlbaLink『親との同居に関する意識調査』