毎日、毎日、満員電車に運ばれる苦行を続けること40年。都会で働く会社員は、まさに苦行という人がいるのも頷けます。だからこそ「定年後は地方移住したい」という人は後を絶ちません。一方で、夢を実現させながらも挫折してしまう人も後を絶たないようです。
「退職金4,500万円」「貯金3,000万円」60歳定年で地方移住、念願の田舎暮らしを始めた仲良し夫婦…一転、わずか1年で逃げ帰った「まさかのワケ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

都会の洗礼を受け続けた共働き夫婦、定年後の夢

平野浩二さん・久美子さん夫婦(仮名・とも60歳)。大学新卒で入社した会社の同期だといいます。28歳で結婚、30歳で第1子、32歳で第2子が誕生。子育てと仕事を両立させることは大変でした。しかし同じ会社で働いているからこそ、お互いをフォローしあうことができ、無事、定年まで勤め上げることができたといいます。

 

――もちろん、同じ会社だからやりにくいこともありましたが、大変なことも、うれしいことも、誰よりも共感できたのは大きかったですね

 

大変だったことといえば、片道1時間ほどの通勤。駅まで徒歩10分。満員電車を乗り継ぎ、会社の最寄りまで40分。そこからさらに徒歩10分……そんな生活を30年以上、続けてきました。

 

――首都圏のなかでも特に混雑するという路線だったので、本当に大変でした。電車が混みすぎて『体が浮いている!』というときもしばしば(笑)

 

大都市の洗礼を受け続けたからこそ、平野さん夫婦には大きな夢がありました。定年後に地方に移住するという夢です。「年をとっても続けられる共通の趣味をつくりたい」と始めたのが農業。近所のシェア農園の一角を借り、夏から秋にかけて、自分たちが育てた野菜を堪能する……そんな趣味をみつけて15年ほど。「いつか自給自足に近い暮らしがしたい」と夢を語っていたのです。

 

コツコツと貯めた預貯金は3,000万円近くあります。さらに退職金は夫婦合わせて4,500万円近くに。これらを軍資金に地方移住を実現……60歳定年を迎えて、いよいよ夢を叶えるときがやってきたのです。

 

問題はどこに移住するか。実は浩二さん、定年後も再雇用で働き続けることに。ただ普段はリモート勤務で、1ヵ月に1度だけ、東京の本社に出社する必要がありました。

 

――新幹線で1、2時間程度のところなら、日帰りで往復ができる。そこで新幹線利用で1時間程度で東京に行けるエリアで移住先を探すことにしました

 

【60代から人気の移住先・ベスト10】

1位「静岡県」…9.5%

2位「群馬県」…7.3%

3位「長野県」…6.1%

4位「栃木県」…5.5%

5位「千葉県」…5.1%

6位「山梨県」…4.7%

7位「神奈川県」…4.0%

8位「東京都」…3.3%

9位「北海道」「山口県」…3.1%

出所:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター