60歳定年。いよいよ老後はすぐ目の前に。そんなタイミングでは、どんなに準備を整えていたとしても、将来に対し大きな不安に襲われるものです。そのようなとき、定年とともに手にした退職金でどうにかしようと考えがち。浅はかな判断から、資産が増えるばかりが損をするというのも定番です。
銀行を信じた自分がバカだった…定年後に投資を始めた「退職金1,200万円・年金想定月15万円」の60歳サラリーマン、スマホを握りしめフリーズ。後悔で涙目のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

預けるだけでは増えません…銀行の勧めで始めた資産運用

65歳の森田博さん(仮名)。さかのぼること5年前、60歳で定年を迎えました。そのとき受け取った退職金は1,200万円。将来受け取れる年金は月15万円程度でした。

 

都内でひとり暮らし。慎ましく生活すれば暮らしていける金額ではありました。しかし、「このままで本当に大丈夫なのか?」という漠然とした不安が消えません。そこで、長年利用していた銀行の窓口で相談することにしました。

 

【単身高齢者の1ヵ月の支出】

消費支出:15万4,601円

(内訳)

食料:4万2,973円

住居:1万3,677円

光熱・水道:1万4,528円

家具・家事用品:6,735円

被服及び履物:3,656円

保健医療:9,102円

交通・通信:1万5,984円

教養娯楽:1万6,311円

その他の消費支出:3万1,624円

※出所:総務省『家計調査 家計収支編 2023年』

 

――今は銀行にお金を預けていても増えません。老後資金を少しでも増やすためにも、退職金を運用されてみてはどうですか?

 

そこでいくつかの投資商品を紹介されました。そのなかのひとつが毎月分配型の投資信託。

 

――毎月分配型の投資信託は毎月安定した分配金がもらえます。定期的な収入が少なくなった老後などに、もう少し収入があれば、という方におすすめです。一方で……

 

これまで貯金が一番安全で安心な資産運用法と考えてきた森田さんは、投資の知識はほぼゼロ。銀行員が話していることもあまり理解できなかったといいます。ただ「へぇ、毎月お金がもらえるなんて、すごくよい話じゃないか」「プロが勧めてくれるものなら間違いないな」と納得。1,200万円の退職金のうち、1,000万円を毎月運用型投資信託に投資をすることにしたのです。

 

その後、毎月5万円程度の分配金を受け取ることができ上機嫌。「こんなに簡単に儲かるのなら、若いうちから始めておけばよかった」。そう思っていたある日、何気なくスマホで投資について検索していると「毎月分配型投資信託やめておけ」という内容の記事が目に飛び込んできました。になって記事を読んでみると、そこに書かれていたのは毎月分配型投資信託の仕組みとデメリット。

 

・分配金の一部は「元本」から支払われていることがある(=自分のお金を引き出しているだけ)

・手数料が高く、長期的に見ると資産が増えにくい

・運用がうまくいかなくなると、分配金が減額されるリスクがある

・タコ足配当(=元本を削って分配する状態)に陥ることが多い

 

――銀行の人は、安定してお金が入るっていっていたのに

 

森田さんの心臓はバクバクと鳴り、冷や汗が流れました。