40年近くにも及ぶサラリーマン人生は、定年を迎えていったんは終了。退職金もしっかりもらい、年金だってそれなりにある……お金に不自由はないにも関わらず、「働き続ける」ことを選択する高齢者も。話を聞くと、定年後のリアルな実態がみえてきました。
おっさん、早くしろよ!…〈退職金3,500万円〉65歳の定年部長、〈年金月22万円〉を受け取りながらも〈時給1,180円〉のバイト生活。罵声を浴びてもコンビニレジに立ち続ける理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金も年金も十分…それでも定年後にバイトを始めたワケ

ヒューマンホールディングス株式会社が働いている65~74歳の男女を対象に行った『シニアの仕事観とキャリアに関する実態調査2025』によると、定年後に働く理由第1位は「生活費を得るため」で54.6%。「社会とのつながりを保つため」43.0%、「身体的健康を維持するため」42.1%、「余剰資金をつくるため」29.0%、「やりがい・達成感を感じるため」28.4%、「自分の経験やスキルを還元するため」25.8%、「精神的健康を維持するため」24.3%と続きます。

 

定年後も働く理由としては、まずは「お金」。ただ和田さんの場合、退職金も年金も人並み以上に手にし、お金の悩みとは無縁のように思えます。元大手企業の部長、なぜバイトを?

 

――これまで仕事で家にいなかったのに、定年後はずっと家にいることになる……それがしんどくて。妻からも「ずっといられるのはしんどい」といわれてね

 

Q.パートナーがいる40歳以上の男女に聞いた「パートナーとの老後の暮らしはどうしたい?」

できるだけふたりで長く暮らしたい…76.8%

ふたりで暮らしつつ、どちらか介護が必要になったら別居したい…11.6%

パートナーの関係を維持しつつ元気なうちから別居したい…5.9%

パートナーの関係を解消したい…4.6%

その他…1.1%

※出所:株式会社LIFULL senior

 

これといった趣味もなく、家にいてもやることも思いつかない。「仕事しかないのか」と考えていたときに、ふと見つけたのがコンビニバイトの案内。学生のころに経験のあるコンビニでの仕事。「バイトであれば気軽にできるだろう」と考えて応募してみたというのが経緯です。

 

ただ思った以上に覚えることが多く、バイトを始めて3ヵ月ほどでも作業に手間取ることも多いといいます。前述のように、客や同じバイト仲間から罵声を浴びることもしばしば。ただ「絶対に辞めない!」と断言。

 

――現役のころ、「最近の若い奴はすぐに投げ出す」とか文句をいっていました。それなのに、一度やると決めたのにすぐに辞めたら目も当てられません。何事も最低でも3年は続けないと

 

「頭も体も使うし、ちょうどいいよ」と和田さん。さすが、大企業の部長にまで上り詰めただけあって、どこか肝が据わっています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

ヒューマンホールディングス株式会社『シニアの仕事観とキャリアに関する実態調査2025』

株式会社LIFULL senior『配偶者・パートナーとの老後についてのアンケート調査』