40年近くにも及ぶサラリーマン人生は、定年を迎えていったんは終了。退職金もしっかりもらい、年金だってそれなりにある……お金に不自由はないにも関わらず、「働き続ける」ことを選択する高齢者も。話を聞くと、定年後のリアルな実態がみえてきました。
おっさん、早くしろよ!…〈退職金3,500万円〉65歳の定年部長、〈年金月22万円〉を受け取りながらも〈時給1,180円〉のバイト生活。罵声を浴びてもコンビニレジに立ち続ける理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

大手企業の元部長…学生のころに経験のあるコンビニバイトを始める

コンビニ店員の和田誠さん(仮名・65歳)。月曜から金曜日、9時~13時のシフトで時給は1,180円。アルバイト代は月に10万円を超えるとか。一方で年金も受け取っている和田さん。その額、月23万円。

 

――大学を卒業してから65歳まで働いたから。結構な金額をもらっていると思うよ

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給権者 の平均受給額は月14万6,429円。男性に限ると平均月16万6,606円です。月23万円を超えるのは、全体の6.9%。和田さん、現役時代は結構な高給取りだったことが想像されますが……。

 

話を聞けば、誰もが知る大手メーカーの部長だったという和田さん。現役時代の最高年収は1,500万円を超え、60歳定年時の退職金は3,500万円だったといいます。

 

――現役時代、多いときで部下は200人くらいいたかな。今はバイトの下っ端だけどね

 

実は和田さん、学生だった40年以上も前、コンビニでバイト経験がありました。そのため、この年になってから働くとなった際に、「今のコンビニバイトは、どのようなものだろう」と興味が湧いたといいます。

 

40年以上前のコンビニバイトがやることといえば、「レジ対応」「品出し・陳列」「清掃」の3つ。基本的に現金だったのでレジ操作はシンプル。公共料金の支払いをはじめ、あらゆる支払いがコンビニで可能になっていますが、和田さんが働いていたコンビニでは、そのようなサービスも行えなかった(はず)だといいます。

 

それが昨今のコンビニバイトといえば、決済方法はクレジットカード、電子マナー、スマートフォン決算など、多様な方法がありレジ対応も複雑。宅配便の発送や受取りも行わなければならず、コンサートやイベントのチケット販売、公共料金や各種料金の支払い受付など、チケット・各種サービスの取り扱いも。レジ横にはチキン、焼き鳥、中華まんなどのフードが並び、調理や提供が求められます。さらに、POSシステムを活用した在庫管理や発注業務など、情報システムを使った業務もプラス。学生のころの記憶に誘われ始めたコンビニバイトですが、あまりに作業が煩雑で、レジで手間取るときも。

 

――おっさん、早くしろよ!

 

レジに並ぶ客から罵声を浴びせられることも珍しくないといいます。