
「持ち家だから安心」というわけではなかった
さらに近い将来、必ず行われるだろう議論についても、大きな懸念があります。
――もう築40年。あと10年ほどしたら、大規模修繕か、それとも建て替えか……そんな話になってくるでしょ。どちらにせよ、さらに負担増となるのは目に見えています。
振り返ると、持ち家とはいえ、何かとお金がかかってきたと中川さん夫婦。特に旧耐震基準で建てられているマンションだったため、耐震改修工事を行った際にはプラス100万円ほどの出費が必要になったといいます。
――毎年の固定資産税もあるし。家賃を払い続けるなら……と思っていたけど、持ち家でも賃貸でも、かかったお金はそんなに変わらないんじゃない?
さらに持ち家だからこそ、不便を感じることも。
――バリアフリーが不十分だから、年寄りが住むのは大変よね。賃貸であればすぐに引っ越す決断ができるんだろうけど、持ち家だとなかなか決心がつかないの。気持ちの問題だけど、私たちの年齢になるとすごく大きな問題よ
内閣府『高齢社会に関する意識調査(令和5年度)』によると、65歳以上の住み替え意向ありは、将来的に検討したい人も含めて30.4%。年齢別にみていくと、「65~69歳」が35.7%、「70~74歳」が31.3%、「75~79歳」が27.4%、「80~84歳」が21.6%、「85歳以上」が18.4%と、年齢とともに住み替えに対する意欲は低下していきます。このなかには中川さん夫婦のように、住みづらいものの住み替えはもっと大変だからと、消極的になっている人も多いでしょう。らくなる。
――この年齢になって、初めて「持ち家があれば安心」というわけではないということがわかったの。もっと早く家を手放して身軽になっていれば、我慢なんてしなくてもよかったんでしょうね
[参考資料]
株式会社R65『高齢者向け賃貸に関する実態調査(賃貸オーナー向け)』
株式会社R65『高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)』