FP office株式会社の髙屋亮FPによると「年収1000万円前後の世帯ほど『老後破綻』に陥りやすい」そうです。現役時代にしっかり稼いでいれば老後は安泰のはずですが、いったいなぜなのでしょうか。年収1,000万円のサラリーマンAさんの事例をもとに、老後破綻に陥る原因と解決策をみていきましょう。

日本の上位5%だぞ、なにかの間違いだろ…年収1,100万円の52歳サラリーマンが“思わず二度見”「ねんきん定期便」に記載されたまさかの事実【FPが解説】
「貯蓄」と「年金受給額」を増やす秘策
52歳のAさんは、65歳で年金受給が始まるまでまだ10年以上あります。「もちろん出費は減らそうと思っているんですが、なんせ老後の暮らしが心配で……。これから貯蓄を増やしたり、年金受給額を増やしたりする方法はないでしょうか?」
Aさんの話を聞いた筆者はまず、A家の今後の収支についてシミュレーションを行いました。その結果、Aさんが言うように、子ども2人の学費は学資保険で賄える見込みです。
そして、Aさんの望みである「貯蓄」と「年金受給額」の増額も、次の方法で実現できます。
1.生活費を見直す
「年収1,000万円」にあぐらをかき、これまで食費から趣味にいたるまであまり金額を気にとめず使っていたA家。これからは、支出額に気をつける必要があるでしょう。
A家の現在の支出内訳を確認したところ、さほど利用していないサブスクリプションサービス(動画・音楽)やジムを解約し、毎週の外食や惣菜購入を抑えるだけで、月12万円も見直し余地があることがわかりました。
とはいえ、月50万円も出費していたところ、いきなり1ヵ月10万円以上の節約は厳しいかもしれません。金融サービスと自動連携できる家計簿アプリも存在しますが、半年間はエクセルで週次の記録を取り、月次の波をならして支出額を継続して抑える感覚を身に染み込ませる方法をとることにしました。
2.年金「繰下げ受給」の活用
年金受給時期を繰り下げて受給額を増額する方法があります。ひと月繰り下げるごとに0.7%受給額が増えるため、仮に5年繰り下げて70歳から年金受給開始とすれば、受給額が42%増える計算です※。
※ これにより所得税・国保なども増額されるため注意が必要。
しかし、繰下げ受給を選んだ場合、本来の受給開始時期から繰り下げた時期まで、年金収入がゼロとなってしまいます。
幸いにもこの点、Aさんは仕事が嫌いでなく、また人材不足に悩む勤め先も意欲ある社員には嘱託で70歳まで働くことを歓迎しているとのこと。
現在よりも年収は下がるでしょうが、本人の希望と実現性を鑑み、この方法も選択肢のひとつとなりそうです。